プロバイダ責任制限法の改正・問題点・デメリットをわかりやすく解説
2022年のプロバイダ責任制限法の改正について 施行はいつから|施行日は2022年10月1日 2021年4月25日に…[続きを読む]
ネットは表向きは便利であっても、ネットの裏側では匿名性を活かした嫌がらせ・著作権侵害・誹謗中傷・名誉毀損など、様々な問題が起こっています。
そこで、このような問題に対処するために作られたのが「プロバイダ責任制限法」というものです。
では、プロバイダ責任制限法とはどんな法律なのでしょうか?今回は、この法律についてわかりやすく解説していきます!
目次
プロバイダ責任制限法とは、ネット上でプライバシー侵害や誹謗中傷といった権利侵害があった場合について、
を定めたものです。
プロバイダ責任制限法は、1条の条文でこのように定義されています。
プロバイダ責任制限法は、正式名称を「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」と言います。
まずは、プロバイダ責任制限法が適用される対象について簡単に見てみましょう。
プロバイダ責任制限法で損害賠償責任が制限される対象は、下記の2つです。
「特定電気通信」とは、ネット上のウェブページや電子掲示板などによって、不特定の人が受信することを予定している通信を指します。
また、「特定電気通信役務提供者」はプロバイダ(ドコモ、auやSoftbankといった携帯会社、ネット回線事業者など)から各サイト・サーバーの管理者まで、幅広いものを指します。
では、損害賠償責任が制限されるとはどういうことなのでしょうか。
例えば簡単に事例で解説してみましょう。
そこで、プロバイダ責任制限法では、「この法律に沿って削除の判断を行えばどちらからも責められることはないよ」と損害賠償責任を負うリスクを無くすようにしたのです。
制限というより「プロバイダの責任が軽減される」と言った方がわかりやすいかもしれません。
上記はプロバイダやサイトなどの特定電気通信役務提供者のメリットになります。
ただ、この法律では権利侵害を受けた「被害者にとってもメリット」となる制度を定めています。
それが「送信防止措置請求」と「発信者情報開示請求」です。
「送信防止措置請求」とは、名誉毀損やプライバシー侵害といった権利侵害をしている投稿を不特定多数の人に見られないようにすること、つまりは投稿の削除請求のことです。
インターネット上の情報は拡散しやすいため、有害な投稿が放置されると大きな影響が及ぶ可能性があります。そのため、そうした投稿については早期に削除措置を取ることが重要です。
プロバイダはこの請求があった場合、プロバイダ責任制限法3条にのっとって、該当する投稿を削除すべきか否かを検討します。
権利侵害があると判断した場合は、プロバイダの判断だけで投稿を削除できます(同法3条2項1号参照)。
もちろん、投稿者本人に削除請求の旨を伝えて自主的削除を促すこともできます。
もし削除するべきかどうか判断がつきにくい場合は、投稿者に削除していいかを照会します。投稿者から削除の同意があるか、または7日以内に「削除に同意しない」旨の回答がなければ、プロバイダが勝手に削除することができます(同法3条2項2号参照)。
一方、権利侵害がないと判断されれば、削除依頼は受け入れられません。
この請求については、プロバイダに直接お願いして任意で削除してもらう方法と、裁判所に仮処分命令をしてもらう方法の2種類があります。
直接お願いする・削除依頼する場合の方法については以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。
「発信者開示請求」とは、権利侵害をする投稿をした人の個人情報を開示するように請求することです。
例えば、5ちゃんねるなどで誹謗中傷をされた場合、該当する投稿を削除すれば終わるわけではありません。
投稿者が再度誹謗中傷の書き込みをしないように相手を「特定」して損害賠償請求をすることが大切です。
このように、匿名相手を特定する場合にこの請求が利用できます。
発信者情報開示請求は、基本的に以下のような流れで行われます。
特に匿名掲示板などは、その管理者が投稿者の個人情報を全て持っているわけではありません。
そのため、上記のように、2回にわけて開示請求が必要になることが多いです。
以下、開示請求できるものです。
また、この発信者情報開示請求も任意で請求する場合と訴訟で行う場合があります。
任意で請求する場合の請求書の書き方については、以下のページで解説しています。
また、発信者情報開示請求について以下のリンクでさらに詳しく説明しています。
はい、発信者情報開示請求における課題の1つが、プロバイダ側でIPアドレスやタイムスタンプなどの情報の保存期間の問題です。
携帯電話番号が分かれば保存期限の心配はありませんが、開示請求でそこまで特定できない場合、保存期間を考慮する必要があります。多くのプロバイダでは通常3ヶ月程度でこれらのログが削除されてしまうため、請求のタイミングが遅れると発信者の特定が困難になる可能性があります。
訴訟や仮処分により開示請求を行う場合、裁判所を介する手続きには時間とコストがかかります。
場合によっては、発信者情報の消去を禁止する仮処分など、複雑な法的手続きが必要になることもあります。
ただし最近では、この問題を改善するための法改正が進められており、状況は良くなりつつあります。
したがって、ネット上の権利侵害トラブルを解決したい場合は、関連ログが消去される前に、速やかに弁護士に無料相談を行い、適切な解決策を立てることが重要です。
以上がプロバイダ責任制限法を簡単に条文、削除依頼や開示請求できるものなどについて解説しました。
最近の事例では木村花さんが誹謗中傷によって亡くなった事件などもあり、開示対象に電話番号が含まれるようになりました(2020年8月31日より)。
今後も注目される法律であるので、プロバイダ責任制限法の知識を身に着けることは損にならないでしょう。
また、万が一自分がネットトラブルに巻き込まれた場合は、この法律を活用して上手く対処していくようにしましょう。