誹謗中傷になる言葉・中傷ならない悪口一覧|簡単に解説
近年注目されている「誹謗中傷」。しかし、誹謗中傷はどういう意味なのか、どこからが誹謗中傷になるのか、批判との違いは何…[続きを読む]
「ネガティブキャンペーン(ネガキャン)」という言葉をご存じでしょうか。
今年は、4年に一度のアメリカ大統領選挙(バイデン・トランプ)もあり、この言葉を耳にする方も多いと思います。
ネガティブキャンペーンは、相手の悪口を言ったり過去のスキャンダルを暴いて社会的評価を下げる行為と言えますが、これらは誹謗中傷や名誉毀損にならないのでしょうか。
そこで今回は、ネガティブキャンペーンに違法性がないのか、誹謗中傷との違いはなんなのかについて解説していきます。
ネガティブキャンペーンとは、もともと選挙活動の1つの方法です。
選挙戦を行うとき、自分が当選するためには対立候補より自分の方が優れていることを有権者に主張する必要があります。
ただ、自分を優位にするのは、自分の良いところを主張するだけでなく相手の悪いところを指摘することでも可能です。
そこで、選挙中に対立候補の悪いところを挙げて自分の優位性を主張するという「ネガティブ・キャンペーン」が行われるようになったのです。
日本では選挙戦でネガティブキャンペーンが話題になることはあまり多くありませんが、2000年代の選挙戦でネガティブキャンペーンとして報道された手法もありましたし、アメリカの大統領選ではよく行われます(英語ではNegative campaigningです)。
また、ネガティブキャンペーンは政治だけでなく、ゲーム商品や企業などビジネスの業域ででも行われることがあります。
こちらは日本でも、「ネガキャン」という通称でインターネット上でよく行われているものです。
ちなみに、車業界における「ネガキャン」は「ネガティブキャンバー」の略でネガティブキャンペーンとは意味が違うので注意しましょう。
それでは、単なる誹謗中傷とネガティブキャンペーンにはどのような違いがあるのでしょうか。
そもそも、誹謗中傷もネガティブキャンペーンも法律用語ではなく、絶対的な定義もありません。
しかし、ネガティブキャンペーンはその歴史から考えれば、選挙戦で勝利するなどの目的のため、明確な意図を持って行う誹謗中傷と言えるでしょう。
また、戦略的に意図して行う以上、ネガティブキャンペーンは名誉毀損にならないように注意して行われることが多いですが、誹謗中傷は衝動的に行う人が多く、名誉毀損など何らかの違法性があることが多いです。
名誉毀損とは、簡単に言えば「公然と事実を適示して相手の社会的評価を低下させるおそれのある行為」のことです。
その事実が嘘か真実かに関わらず、不特定または多数の人にイメージダウンに繋がる内容を広めるなど、上記の行為に該当すれば原則として名誉毀損になります。
しかし、名誉毀損罪には一定の免責事由があります。
選挙におけるネガティブキャンペーンは通常は3に当てはまるため、違法になることは多くありません。
また、選挙以外におけるネガティブキャンペーンであっても、公共性・公益性・真実性があれば適法であるといえます。
通常、企業の広告等では、適法にネガティブキャンペーンを行うため、名誉毀損にならないよう注意して作成、配信されます。
一方、誹謗中傷は、公共性・公益性がなかったり、全く真実に反することであったりと、一般的な感覚で言えば「事実無根」や「根拠がない暴言」などと理解されるものです。
そのため、公然と誹謗中傷がされた場合は、ネガティブキャンペーンよりは名誉毀損にあたりやすいでしょう。
先述したように、ビジネスの領域において、ライバル企業にネガティブキャンペーンが行われることがあります。
自社の優位性を高めるために、ライバル社やその商品、サービスの内容を批判するのです。
例えば、Googleが自社スマートフォンPixelシリーズの発表やCMで、iPhoneシリーズと比較して、iPhoneはカメラが暗いけどPixelは明るく綺麗に撮れるといった内容を出したことが一時期話題になりました。
日本企業ではあまり多くありませんが、こうした他社と比較しながら行う広告も、ネガティブキャンペーンの一種と言えます。
しかし、日本ではネガティブキャンペーンの意味や使い方を誤解し、意図的に、匿名掲示板や口コミサイトに名誉毀損に当たるような書き込みをするといったこともあります。
個人が企業や著名人等に対して行う場合はもちろん、企業が他社について行う場合もあります。
こうした書き込み等は、公共性や公益性を立証するのが難しく、違法と判断されることが少なくありません。
「ネガティブキャンペーン」の名の下に使い方を誤ると、かえって自社が名誉毀損の責任を問われる可能性があるので注意してください。
過去のアメリカ大統領選では、多くのネガティブキャンペーンが行われています。
例としてあげられるのは、トランプ氏とクリントン氏の大統領選でしょう。
当時、クリントン氏がトランプ氏に対し「人種差別主義者」や「無知」「納税義務を果たしていない」「女性蔑視者」などと主張してネガティブキャンペーンを展開しました。
これに対してトランプ氏は、「ウソつき」「腐敗した政治家」「破綻している」「健康問題」「私用Email問題」などを主張し、互いに自身の優位性を確保しようとしました。
また、2012年のオバマ氏とロムニー氏の選挙では、オバマ氏はロムニー氏がペットの犬を車内に入れず、屋根に置いた箱の中に閉じ込めたまま10時間以上運転したことを取り上げて「ペット虐待」と報じ、ロムニー氏は「オバマ氏は少年時代にイヌを食べていた」と主張し返しました。
そして2024年においては、バイデン氏とトランプ氏間で戦いが繰り広げられています。
トランプは、バイデンを批判する際にしばしば「Sleepy Joe」と呼び、バイデンが高齢でエネルギー不足だという印象を与えようとしました。
トランプは、バイデンの息子であるハンター・バイデンがウクライナのエネルギー会社に不正に関与していたとの疑惑を利用し、バイデンを攻撃しました。この疑惑は後に否定されましたが、トランプ陣営はこれを選挙戦で利用しました。
バイデン陣営は、トランプ政権がCOVID-19パンデミックに対処する際に不適切な行動を取ったと主張しました。特に、感染拡大を抑えるための措置が遅れたことや、科学的根拠に基づかない発言や政策を実施したことを批判しました。
バイデン陣営は、トランプが人種差別や偏見を助長する言動を行っていると非難しました。特に、トランプが移民やイスラム教徒に対する厳しい言動や政策を取っていることを批判しました。
このように、アメリカ大統領選では互いにネガティブキャンペーンを繰り返してきた歴史があることがわかります。
では、自社がネガティブキャンペーンを受けてしまったら、どのような対抗策をとればよいのでしょうか。
大統領選のような適法なネガティブキャンペーンであれば、対抗策を考えることは難しいです。
自社も正当に企業活動を展開して、良い評価を積み重ねることでネガティブキャンペーンによるイメージダウンを覆すしかありません。
これに対し、ライバル社から「ネガティブキャンペーン」という名の下に単なる誹謗中傷や名誉毀損をされた場合には、対抗策があります。
まずは、これ以上影響が広がらないように誹謗中傷の記事や書き込みを削除しましょう。
SNSや匿名掲示板などでは、基本的に利用規約違反として運営側に報告することで削除してもらえる可能性があります。
また、プロバイダ責任制限法に基づいて「送信防止措置請求」を行うことによって法的に削除する方法もあります。
ただ、「送信防止措置請求」を直接企業に送り、任意で削除を請求したとしても、必ずしも削除されるわけではありません。
迅速に削除してもらいたいのであれば、裁判所に削除の仮処分命令を出してもらうのが一番でしょう。
ネット上での誹謗中傷は、相手が匿名である場合が多いです。
しかし、「発信者情報開示請求」を行うことで相手を特定できることがあります。
誹謗中傷の書き込みが頻繁に行われ、対処しきれないと感じたら、思い切って相手を特定して、次の法的手続きを検討するのも1つの手です。
誹謗中傷を行った相手がわかれば、名誉毀損にもとづく損害賠償請求や差止請求をしたり、名誉毀損罪として刑事告訴をしたりすることができます。
ただ、このような法的な対応をするには複雑な手続きが必要になることもあります。
他社から、本来の「ネガティブキャンペーン」とはかけ離れた誹謗中傷や名誉毀損を受けて困っているのであれば、被害が大きく広がらないうちに弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。