ストーカー規制法とは?法改正の歴史をわかりやすく解説

ストーカー規制法

ストーカー規制法が成立したのは2000年。現時点でまだ17年ほどしか経っていません。それ以前は脅迫や暴行、住居侵入などが行われて初めて相手が逮捕されるという形で、つきまとい行為自体の規制はありませんでした。

そのため「つきまとい行為」を受けて身の危険を感じて警察に相談しても、警察は動くことができなかったのです。

ストーカー規制法成立の大きなきっかけは1999年に起こったいわゆる「桶川ストーカー殺人事件」。

恋愛関係のもつれから被害女性が加害男性に殺害されたというもので、事件の凄惨さはもちろん、警察の対応の問題点なども数多く判明し、世間に大きな影響を与えました。

今回はその「ストーカー規制法」についての解説と、最近増えている「ネットを利用したストーカー」についてお話しましょう。

1.ストーカー規制法とは何か

「つきまとい等」を繰り返すストーカー行為者を規制する法律で、正式名称を「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。

この法律が制定されたことで、脅迫や暴行などの実行には至らない「つきまとい行為」を行った相手に警告や禁止命令を出したり、その相手を逮捕したりできるようになったのです。

1-1.ストーカーの要件とは?「つきまとい等」の具体的な内容

ストーカー規制法では「つきまとい等」とは具体的にどのようなものなのか、大きく8つに分けて示されています。これらの行為を繰り返すことが「ストーカー行為」とされています。

1-1-1.つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき

被害者の出先までついてきたり、目的地で待ち伏せをしたり、家の近くをうろついたりすることです。

1-1-2.監視していると告げる行為

何らかの方法で被害者を監視し、「今帰ってきたんだね」「いつも見てるよ」などと告げるような行為のことです。

1-1-3.面会や交際など、義務のないことの要求

もう会いたくないような状況なのに「会ってくれ」「よりを戻してくれ」などと要求してくることです。

1-1-4.粗野または乱暴な言動

大声で「死ね」「馬鹿野郎」などと言ってきたり、家の前で大声を出して暴れたりするなどの行為のことです。

1-1-5.無言電話、連続した電話・FAX・Eメールの送付など

Eメールだけではなく、LINEなどの送信やSNSやブログなどへの書き込みなども含まれます。

1-1-6.汚物や動物の死体などの送付

嫌悪感を覚えるようなものを相手に送り付ける行為のことです。

1-1-7.名誉を傷つける

被害者の職場に誹謗のチラシを送ったり、インターネット上に中傷するような書き込みをしたりして名誉を傷つける行為です。

1-1-8.性的羞恥心の侵害

卑猥な画像や動画を送りつけるなどの行為のことです。

1-2.ストーカー行為の罰則

1-2-1.ストーカー行為をした場合

以前まで、ストーカーは親告罪であり、被害者からの告訴がなければ逮捕できませんでした。しかし2016年の改正で非親告罪となり、被害者からの告訴がなくても逮捕ができるようになりました。
その場合の罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」となっています。

1-2-2.禁止命令を破ってストーカー行為をした場合

被害者からストーカー行為の相談があった場合、警察は相手をすぐ逮捕するのではなく、相手に「警告」を出すこともできます。それでも行為がやまない場合はさらに効果の強い「禁止命令」を出しますが、それにも従わずストーカー行為を続けた場合、上記よりもさらに重い「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」という罰則が規定されています。

1-2-3.禁止命令を破った場合

「禁止命令」とはもちろん「ストーカー行為を禁止する」という命令ですが、ストーカー行為の禁止だけではなく、例えば「ストーカー行為に関係する写真のデータを破棄しなさい」という命令が含まれる場合もあります。

禁止命令が出たことでストーカー行為はやめたものの、付随する命令には従わなかった、などという場合(上記の例でいうと写真のデータを破棄しなかった場合)、 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

2.ネット社会とストーカー規制法の改正の歴史

今般、インターネットはストーカー被害者にとって大きな脅威になりえます。インターネットの技術は日進月歩で、その発展に法律がなかなか追いつかない、という状況なのも事実。いままでどのような歩みがあったのか、見てみましょう。

2-1.逗子ストーカー殺人事件と2013年7月の法改正

ストーカー規制法が成立したのが2000年。その当時連絡手段としてのEメールはまだそこまで一般的ではなく、条文の中の「つきまとい行為」にはEメールの送信が想定されていませんでした。

つきまとい行為に「Eメールの連続した送信」が追加された背景には、2012年に神奈川県逗子市で起こったストーカー殺人事件があります。

この事件は被害女性が以前の交際相手にストーカー行為をされ、その果てに刺殺されるという、大変痛ましいものでした。

加害男性はそれ以前にも女性に「刺し殺す」などのメールを送ったことが理由で脅迫罪で逮捕されているほどでした。男性はその事件で執行猶予となったあとも、計1000通以上の嫌がらせメールを女性に送信します。女性は警察にも相談しましたが、この時点では「Eメールの連続した送信」は規制の対象外だったため、警察としても動けなかったのです。

この事件がきっかけとなり、2013年7月の法改正で 「Eメールの連続した送信」も「つきまとい行為」に追加された、というわけです。

2-2.小金井ストーカー殺人未遂事件と2016年12月の法改正

逗子の事件がきっかけで「Eメールの連続した送信」がストーカー規制法上の「つきまとい行為」に追加されましたが、その後コミュニケーションツールとしてEメールをしのぐ勢いで発展していったのがLINEやTwitter、FacebookなどのSNSです。現在はEメールよりもSNSなどで友人と連絡を取り合うことのほうが多いです。

しかしこれらを利用したメッセージの送信やブログなどの書き込みは「Eメールの送信」とは別の行為であるとされ、2013年の改正でも対象外でした。

このSNSへの書き込みなどが「つきまとい行為」に追加されるきっかけとなったのが、2016年5月の「小金井ストーカー殺人未遂事件」です。

この事件は芸能活動をしている女性がファンを名乗る加害男性に刃物で刺されたというもの。男性はTwitter上で女性にメッセージを送り続けるなどしており、身の危険を感じた女性は警察に相談もしていました。

しかし逗子の事件と同様「TwitterなどのSNSへの連続した書き込み」はストーカー規制法の対象外だったため、事件が起こるまで警察は加害者を逮捕することができなかったのです。

これがきっかけで、「インスタントメッセージやSNS、ブログなどへの連続した書き込み」が2016年12月の法改正で「つきまとい行為」に追加されました。

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3.ストーカー規制法違反の事例

最近ではストーカーで逮捕される例は枚挙にいとまがないほどですが、具体的な逮捕例をいくつか挙げてみましょう。

この例はほんの一部であり、似たような状況で逮捕される人は日々多くいます。それだけストーカー行為が身近な犯罪である、いうことのあらわれでもあります。

3-1.待ち伏せ等によるストーカー行為

2017年6月、和歌山県で、別居中の妻の車にGPS端末を取り付け、行動を見張ったり外出先に現れたりした夫(35歳)が逮捕されています。

3-2.Eメールの連続送信によるストーカー行為

2017年8月、愛知県で、被害女性に交際を要求する電子メールを送信し、警察から警告を受けたにもかかわらずその後も連続してメールを送信した男性(24歳)が逮捕されています。

3-3.SNSへの書き込みによるストーカー行為

2017年1月、石川県で、Twitterに女子高生を監視しているような書き込み(「バス停で見ている」「○○の家ってここなんだ」「○○ちゃんの行動パターンを知り尽くした」など)を繰り返した男(34歳)が逮捕されました。Twitterに書き込んでいただけでなく。実際に監視行為も行っていたとのこと。

4.ストーカー規制法まとめ

ストーカーは実はとても身近な犯罪。とくにインターネットを利用したコミュニケーションツールが発展し、スマートフォンなどで簡単にメッセージの送信などができる時代ですから、だれでも被害者になる可能性があるのです。

身の危険を感じたら、できるだけ早く警察へ相談すべきです。また、万全を期すために、法律に詳しい弁護士へも並行して相談しておくとより安心です。その場合、できる限り証拠になるようなものをまとめておくと、相談がスムーズにすすみますよ。

「ストーカーの被害を受けていることが恥ずかしい」そう思って相談を思いとどまってしまう人もいます。しかし何かあってからでは遅いのです。少しでも「これはストーカーでは?」と思うようなことがあったら、早めに警察や弁護士への相談を検討しましょう。

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