ネットにおける「表現の自由」と「名誉毀損」どちらが重視されるか?
日本の憲法では「表現の自由」が保障されているはずです。ネット上の自由な表現が、どうして認められないことになるのでしょ…[続きを読む]
ネット誹謗中傷について上記のような疑問を感じた人もいるでしょう。今回は、どのような書き込みが名誉毀損・侮辱罪・プライバシー権の侵害に当てはまるのか、またどんな場合にどんな責任が発生するのかを解説します。
ネット誹謗中傷が行われると、名誉毀損罪が成立することがあります。
たとえば典型的なものが、虚偽の事実を提示して相手をおとしめる行為です。
名誉毀損にあたる言葉は、下記のようなまるで犯罪者呼ばわりのような言葉が例として挙げられます。
このような事実無根の内容をネット上に投稿されると、その内容が不特定多数の人に公開されてしまい、結果的に他人の名誉を傷つけることとなります。
上記の例は虚偽のケースでしたが、相手方をおとしめる書き込みや近所に悪口を言いふらすことは、たとえその内容が事実であっても問題になります。
たとえば、先に挙げた例で「あいつは前科者だ」とネット掲示板上に書き込んだ場合、それが事実であっても名誉毀損が成立する可能性があります。
「事実の書き込みなら書き込んだり、近所に言いふらしても問題ないはずだ。表現の自由があるから」と思いがちですが、名誉毀損行為は、それが相手の社会的評価を低下させるものである限り、内容が真実であるかどうかは基本的に問題にはなりません。
なお、「人の社会的評価を低下」させるかどうかについては、客観的に判断されます。
ネット上での発言は、基本的に自由であるべきです。それは、表現の自由が憲法上保障されている以上当然のことです。
「表現の自由」 とは、日本国憲法第3章 「国民の権利及び義務」 の第21条によって保障された、日本国民全てが持っている基本的人権のひとつです。
日本国憲法第21条
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
そのため、インターネットで発生する名誉毀損も、警察がやみくもに取り締まることができるわけではありません。
「どこまでが国民の権利の範囲なのか?」「どこからが、犯罪や刑事罰に含まれやすいのか?」等は下記記事が詳しいので併せてご参照ください。
名誉毀損罪は、刑法230条に規定されている犯罪です。名誉毀損罪が成立する場合、下記のような刑事罰が科されるおそれがあります。
3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金刑
また、「名誉毀損」が成立する場合、刑事的のみならず民事的な責任も発生するおそれがあります。
この場合、書き込んだ人は対象者に対して損害賠償責任を負うので、「慰謝料」などを支払わなければなりません(民法709条)。
さらに、名誉回復のための措置をとる必要が発生します(民法723条)。
なお、名誉毀損全般に関しては、下記の記事で詳しく解説していますので、併せてご参考ください。
インターネット上の誹謗中傷行為は、「名誉毀損」以外にも「侮辱罪」にあたるケースが存在します。
『事実を摘示しないで』、相手方を侮辱する発言をした場合にも法的責任が発生し、この場合には、刑法上の「侮辱罪」が成立します。
名誉毀損罪とは刑法230条に規定されている罪であり、第1項では下記のように規定されています。
わかりやすく言うと、名誉毀損罪とは「不特定多数の人が認識出来る場所」で他人の社会的評価を損なったり、損なう可能性のある具体的な事柄を文章や口頭で示すことによって成立する罪であり、その罪に対しては懲役か罰金が下るということです。
また「その事実の有無にかかわらず」とあるように、まず内容の真偽は問いません。
次に侮辱罪とは刑法231条において定められる罪で、下記のように規定されています。
名誉毀損罪と侮辱罪との違いは、名誉毀損が事実の摘示であることに対し、侮辱罪では「事実を摘示しない」という点です。
たとえば、相手をむやみに汚い言葉で悪口で罵倒する行為で、下記のような言葉が侮辱罪にあたりやすい言葉です。
子供の頃は上記のように「クズ」「馬鹿」「気持ち悪い」のような言葉を使うこともあるでしょう。
ただ、このまま改善できずに大人になると、インターネット上でも同様の発言を行い、対象者から刑事告訴されて逮捕されるおそれなどもあるので注意しましょう。
また、「Aさんは浮気性だ」という書き込みも侮辱罪になります。浮気性というのが事実かどうかというのは実態をみていなくてはなりませんから、これでは名誉毀損罪は成立しないのです。
侮辱罪に関しては、次の記事で詳しく解説しています。
ネット上で問題になるのは、名誉毀損や侮辱罪などが発生する場面だけではなく、「写真などが撮影され、それが公開される」ケースがあり、その場合「プライバシー権の侵害」が成立します。
なお、プライバシーの侵害は、刑法で罰する規定はありません。
ただ民事的な責任は発生し、侵害した場合、損害賠償責任を負う事になります(民法709条)。
名誉毀損・侮辱罪・プライバシー権の侵害など、似たような概念を併せて解説して参りました。
安易にネット誹謗中傷をした場合でも、警察に逮捕され刑事罰を科されるおそれがあります。
また「犯罪者呼ばわり」されたり「悪口」を言われて被害を受けた場合、名誉毀損の法律相談をうけられるのは、弁護士だけです。
被害の状況をネット誹謗中傷に強い弁護士に伝え、相談しながら今後の対応を考えていく必要があります。