プライバシー権とは?自己情報コントロール権との違いをわかりやすく解説
近年プライバシー権の重要性が高まり、その権利内容が拡大されてきています。そこで今回は、プライバシーの侵害になる基準や…[続きを読む]
「個人情報」の定義が難しいという方もいるでしょう。例えば名前だけ、住所のみで個人情報と言えるのか等です。
近年ではSNSなどを通じてネット上で個人情報の漏洩が起きることが多くなっています。
もちろん、個人が勝手に他人の個人情報を公開すればプライバシー権の侵害として損害賠償が請求される恐れもありますし、事業者が漏洩すれば個人情報保護法違反になる可能性があります。
ただ、どのような情報が「個人情報」と言われるのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、個人情報の意味や具体例、範囲、生年月日や氏名のみでも個人情報と言えるかなどを解説していきたいと思います。
目次
個人情報は、「個人情報保護法」という法律で以下のように定義されています。
繰り返しになりますが、上記を簡単にいうと、現在も生存している個人に関する情報で、その情報で特定の個人を識別できるものを指します。
加えて、「他の情報と照合することで個人を特定できる情報」や「個人識別符号を含む情報」も個人情報とされます。
また、「生存」とあるように、生きている人にのみ適用されるため、会社・法人・故人などには認められません。
先述したように、個人情報には大きく分けて以下のように3つの種類があります。
ここでは、「個人情報の範囲」についてもう少し具体例を交えてお話をしていきましょう。
「氏名」だけで個人情報となるのでしょうか。
この場合、もし氏名がとても珍しい名前で、他に同じ名前がいなければ一人に特定することができます。
すると、上記①の「その情報で特定の個人を識別できるもの」に当てはまるため、「個人情報」であるといえます。
一方、同姓同名の人が沢山いるような名前だったらどうでしょうか。この場合、氏名だけがわかっても一人に特定することはできません。
すると、個人情報とはいえなくなってしまうのです。
もっとも、法律上で個人情報といえない場合があるだけで、行政解釈や社会通念上は個人情報と解されている点には注意してください。
では、苗字のみと会社名が組み合わさった情報は個人情報と言えるでしょうか。
この場合、従業員が全国に何万もいるような大きな会社で、同姓の人がいる場合には特定できないので個人情報とならない可能性が高いです。
しかし、十数人しかいない会社で同姓の人、同じ苗字の人がいない場合には特定できる可能性が高いので、個人情報といえるでしょう。
上記でも解説してきたとおり、「特定の個人を識別することができる」のが個人情報であります。
そのため、住所のみや電話番号のみの場合だと、即時に個人情報とは言えないのです。
あくまで別の情報と組み合わせた場合に、特定の個人を容易に識別できるかどうかが重要です。
名前は載っておらず、学校名や学籍番号だけが一緒に記載された「学校の成績表」ならどうでしょうか。
この成績表が公開されても、通常は誰の成績かなんてわかるものではありません。
しかし、学校関係者で生徒の成績を見れる立場の人や、学籍番号から生徒の名前を把握できる立場にいる人ならどうでしょう。
誰の成績か特定することができてしまいますよね。
このように、単独ではわからない情報でも、他の情報と結びつけて個人を特定できる場合であれば、学校の成績表でも「個人情報」となるのです(このケースでは上記②の定義に該当します)。
個人情報保護法では、「個人識別符号を含む情報」(上記③の定義)も「個人情報」としています。
「個人識別符号」とは、
をいいます。
運転免許証の番号は上記の通り個人識別符号にあたりますので、こちらも個人情報となります。
ここまでご説明してきたように、一概に「個人情報」といっても、人によって範囲が変わる可能性があります。
それを前提として、一般的に個人情報だといわれる具体例としては以下を参考にしてみてください。
どの情報がどの人にとって個人情報に該当するか判断することは、とても難しいです。
また、生年月日や電話番号といった一見この情報だけでは個人を特定できないものであっても、情報を組み合わせることで個人を特定できてしまうなら「個人情報」となります。
今はネット上で簡単に個人情報を公開する人もいますが、何がどのように悪用されるかわかりません。
上記の具体例に含まれるような個人情報は、特に意味がなければ軽い気持ちで流さないようにしましょう。
冒頭に少し触れましたが、他人の個人情報を勝手に流すとそれなりの制裁を受けることがあります。
まず、個人が勝手に他人の個人情報を流した場合、プライバシー権の侵害となり不法行為(民法709条)にあたります。
犯罪ではないので前科はつきませんが、民事訴訟で損害賠償請求をされれば、数十万円などそれなりの慰謝料を支払わなければならない可能性もあります。
また、ネットなどどこかに公開した場合には、投稿した書き込みを削除するといった作業を求められることもあります。
事業継続に際し、個人情報を取り扱う人や法人を「個人情報取扱事業者」といいます。
個人情報取扱事業者は「個人情報保護法」に基づいて、適切に個人情報を管理しなければなりません。
しかし、もし管理を怠って個人情報を漏洩し、その後も個人情報保護委員会の命令に違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が科されます(※)。
※いきなり処罰されるのではなく、まずは是正勧告や改善命令を受けることになります。
また、不正な目的で個人情報を漏えいさせた場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金刑が科されることがありますので注意しましょう。
以上が、個人情報の意味と範囲、具体例、名前だけ・住所だけなどで個人情報になるのかについてでした。
現代ではネットの普及に伴い、個人情報をインターネット上で入力・保管することが多くなっています。
ネットはハッキングやウイルスなどのリスクがあるに加えて、一度漏洩してしまうととてつもない速さで拡散されてしまう恐れがあります。
そのため、個人情報の意味や範囲、具体例についての知識を身に着け、自分の分はもちろん、他人の個人情報の取り扱いにも注意するようにしましょう。