知る権利と情報公開法|裁判例と具体例を簡単にわかりやすく解説

知る権利、アクセス権については「具体化」する法律があるかどうかが重要です。

知る権利については、「情報公開法」があるため、少なくとも行政に対する関係では具体的に保障されています。

これを使うと、独立行政法人の業務内容や地方自治体の財務状況、建築確認などの許認可の状況、不動産に関する図面など、いろいろな情報の提供を求めることができます。

これらの権利に対し、アクセス権については、具体化した法律がないために、現時点では具体的権利として認められていないと考えられています。

この記事では、知る権利、アクセス権と「具体化」する法律は何か、憲法に明記されているのかされていないのか、また報道の自由や表現の自由との関係や問題点、裁判例や具体例、事件などを簡単にわかりやすく解説していきます。

知る権利とは|簡単にわかりやすく解説

憲法で補償される表現の自由の一つ|明記されていない

「知る権利」とは、憲法第21条で保障される表現の自由の一つであり、個々人の自己実現や自己統治において欠かせない要素です。

憲法には明示的に規定されていませんが、明確に憲法上の権利であり、憲法が保障すべき権利の一つとして存在しています。

なぜ必要か|報道の自由

国民は自由に情報にアクセスでき、政府がテレビや書籍の内容を検閲することはありません。これらの表現の自由、報道の自由や知る権利は民主主義の基盤となる重要な権利であり、尊重されるべきです。

たとえ逮捕歴や前科に関する情報であっても、それをGoogleの検索結果から除外することは、表現の自由を侵害する可能性があります。

さらに、情報へのアクセスが妨げられることは、国民の「知る権利」を侵害するおそれがあります。

問題点:知る権利とプライバシーの権利の対立、どちらが優先されるか

全ての情報に知る権利が絶対的に認められるわけではないのが問題点です。

個人のプライバシー権との間には対立が生じることがあり、その優先順位は状況によって異なります。

詳細については別途記事で解説しますが、この問題については常に考慮しておく必要があります。

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知る権利と情報公開法とは

情報公開法は、知る権利を具体化した法律

知る権利は、国民がさまざまな情報にアクセスできる権利です。

ただ、「知る権利が認められる」と言っても、実際にその方法や、どこまでの情報公開を求めることができるかなど、具体的に定まっていないと権利行使することは困難です。そこで、政府情報等の公開を要求することのできる権利としての「知る権利」は、「情報公開法」という法律により、保障されています。

情報公開法とは、国民が国や地方自治体、独立行政法人に対し、行政が把握しているさまざまな情報公開を求める権利を認め、その方法を定めている法律です。

正式には「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)」「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)」であり、「行政機関情報公開法」「独立行政法人等情報公開法」と呼ばれることもあります。

情報公開の対象となる機関

情報公開法が適用される機関は、以下のとおりです。

  • 内閣官房や内閣府
  • 人事院や国の省庁
  • 委員会や会計検査院
  • 国立大学
  • 独立行政法人、特殊法人など

情報公開の対象となる文書

対象文書は、以下のとおりです。

  • 行政機関や独立行政法人の職員が職務上作成したり取得したりした文書や図画、データなど

情報公開できる人と不開示情報について

どのような人でも文書公開を求めることができて、「不開示情報」が記録されていない限り、開示を受けられます。

不開示情報となるのは、主に以下のような情報です。

  •  個人情報
  •  法人等についての情報で、公にすると、法人の利益を損なう可能性のあるもの
  •  公にすると、国の安全が損なわれるおそれがあるもの
  •  公にすると、犯罪の予防や捜査等、秩序維持に支障が及ぶ可能性のあるもの
  •  国や地方公共団体の内部や相互の審議であり開示すると率直な意見交換ができなくなる可能性のあるもの
  •  国や独立行政法人などの業務遂行に支障を及ぼす可能性のあるもの

ただし、上記に該当するケースでも、行政機関の裁量によって開示をすることが認められます。

情報開示の手続き

国民から情報開示請求があると、請求時から、基本的に30日以内に開示の決定を行う必要があります。

開示の方法としては、閲覧をさせたり写しを渡したり、データを提供したりする方法で認められます。

また、不開示決定があったときには、国民は審査請求を行うことも可能です。

情報公開に対する基本的な責務について

政府や地方自治体、独立行政法人などは、情報提供を適切に行うための取り組みを強化する必要があります。

特に独立行政法人においては、組織や業務、財務状況に関する基本的な情報を記録した文書を作成し、国民が利用しやすい形で適切に提供する必要があります。

また、情報公開に関する総合的な案内所の整備も求められています。

知る権利、アクセス権が争われた事件・判例

次に、知る権利やアクセス権が具体的に争われた問題点、事件、具体例や裁判例をご紹介します。

知る権利と情報公開法が問題となった判例(最判平成6年1月27日)

住民が大阪府に対し、公文書公開条例に基づいて情報公開した事案です。このとき、住民は、知事が支出した交際費についての公文書の公開を求めましたが、一部は開示、一部は非開示となりました。

住民らがそれに対して異議申立をしましたが、棄却されたので、その処分の違法性を争って裁判が行われました。この事件で、一審と二審は住民らの主張を認めて行政による情報公開拒絶処分を違法と判断しました。

しかし最高裁は、情報公開に応じるかどうかについては、知事自身が、個別具体的に、裁量によって決定すべきであるとした上で、すべての情報を公開すると、知事の交際事務を適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあるという理由により、原判決を破棄して差し戻しました。

この件では、国民の知る権利よりも、行政側の裁量が優先されたと言えます。

アクセス権が問題となった判例(サンケイ新聞意見広告事件・最判昭和62年4月24日)

昭和48 年12月2日、サンケイ新聞が、共産党を批判する内容の自民党による意見広告を掲載しました。これを受けて、共産党は、内容が誹謗中傷に満ちており、反論意見を促すものであるとして、サンケイ新聞に対して反論文の無料掲載を求めた事件です。

共産党が、サンケイ新聞というマスメディアに対し、反論掲載権というアクセス権を認めることができるかが問題となりました

結果として、一審も二審も共産党の訴えを認めず、原告が敗訴していました。

最高裁も、以下の理由により、上告棄却しています。

  •  そもそも、表現の自由にもとづいて、反論文の無料掲載請求権は認められない
  •  私人間(民間同士)において、憲法21条により、当然に反論文掲載の権利を導けるものではない
  •  人格権又は条理に基づく反論文無料掲載請求権は認められない。
  •  民法723条(名誉回復措置の要求)の存在はあっても、これによって反論文掲載請求権の根拠とまで解釈することはできない
  •  反論文の掲載請求権を認めると、マスメディアが望まない内容の掲載を強制されることとなり、そのために誌面も割かれるなど負担が発生するので、マスメディアの表現の時湯を侵害する危険性がある

以上のように、最高裁は、アクセス権を具体的に実現する法律がないことなどをも根拠として、アクセス権を否定しています。

まとめ

今回は、憲法で保障される知る権利、アクセス権、また情報公開法、表現の自由や報道の自由との関係について解説しました。

これらの権利については、知っているようで知らないことが多いものですが、安全にネットを使うためには必ず押さえておくべき知識です。

今回の内容を参考にして、違法行為に及ぶことなく、被害者なることも避けながら、上手にネットを使いましょう。

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