プライバシー権と自己情報コントロール権との違いをわかりやすく解説

プライバシー侵害

プライバシー権と自己情報コントロール権は、現代社会における個人の権利を守るための重要な概念です。

しかし、これら二つの権利はしばしば混同されがちです。

本記事では、プライバシー権とは何か、自己情報コントロール権とはどのようなものなのか、そしてこれらがどのように異なるのかをわかりやすく解説します。

プライバシー権とは|憲法13条

定義

プライバシー権とは、一般に以下の内容を意味します。

  • 私生活上の事柄をみだりに公開されない法的保障・権利」(東京地裁昭和39年9月28日判決)

憲法13条

そして、プライバシー権は、日本国憲法13条後段で保障されている「幸福追求権」の一内容として、すべての国民に認められています。

積極的プライバシー権

また、プライバシー権には、以下の解釈も有力です。

  • 自己に関する情報の開示・訂正・削除を求める権利も含まれるとする(積極的プライバシー権)。

積極的プライバシー権の内容は、後述する「個人情報保護法」によって法律上具体化されるに至っています。

自己情報コントロール権とは

プライバシー権の新展開

プライバシー権は、古典的には「私生活上の情報をみだりに公開されない権利」でした。

しかし、最近では「自己情報コントロール権」という、自分の個人情報の取り扱いや開示、非開示などについて自分で決定できる権利が加わり、その範囲が広がっています。

この権利は、「個人情報保護法」などによって明文化されています。

自己情報コントロールとプライバシー権との違い

自己情報コントロール権は、私生活の情報だけでなく、氏名や住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報全般を対象としています。

これは、古典的なプライバシー権が受動的な保護(侵害後の損害賠償請求など)を提供するのに対し、自己情報コントロール権は、情報の公開や削除を積極的に求めることができる、より能動的な権利と言えます。

個人情報保護法とは

プライバシー権に自己情報コントロール権が認められるようになったことと関連して「個人情報保護法」が平成17年4月1日から全面施行されています。

個人情報保護法は、個人情報を守るための法律で、企業などが個人情報を把握するときの管理方法や取扱いに関して規定をしているものです。

以下の原則に従って個人情報の取り扱いを規定しています。

  • 情報を収集する際には、情報の本人の同意を必要とすること
  • 情報利用の目的を明らかにして、目的外の利用をしないこと
  • 目的外の利用を行う際には、情報の本人の同意をあらためて取り付けること
  • 情報の漏えいや紛失を防ぐ措置をとること
  • 情報の本人からの請求があったら速やかに開示すること
  • 情報の本人からの削除訂正要求があったら速やかに応じること

個人情報保護法は、私生活に関する情報だけでなく、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、年齢、家族構成、勤務先などの情報を含む広範な情報を保護対象とします。

さらに「一般に知られている情報であっても保護の対象」とします。

守られる個人情報の範囲はとても広く、氏名や住所、メールアドレスなどの情報のみならず、個人のDNAや顔、虹彩や声紋、歩き方や静脈、指紋なども個人情報となります。

さらに、パスポートの番号や基礎年金の番号、免許証の番号や住民票コード、マイナンバーなどの公的な番号も個人情報です。

個人情報を取り扱う事業者は、個人情報を適切に管理し、漏えいなどを防止する措置を講じる必要があります。以前の規定では、個人情報取扱事業者は5000人を超える個人情報を取り扱う事業者に限られていましたが、法改正によって人数の制限がなくなったので、1人の個人情報でも預かっていたら、個人情報保護法が適用されます。

個人情報取扱事業者は、適切に個人情報を管理する義務を負うと共に、基本的に、本人の承諾なしに勝手に個人情報を第三者に提供してはなりません。ただしこれについては、一部例外がもうけられています。

また、本人から情報の訂正や削除の要請があったら、速やかに対応する必要があります。

さらに、個人情報を不正な目的で提供した場合には、罰則も適用されます。

以上のように、個人情報保護法は、個人情報が適切に管理されるための法律であり、個人のプライバシー権・自己情報コントロール権を具体化したものと言えるでしょう。

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「忘れられる権利」「削除権(消去権)」とは

プライバシー権の新展開

また、プライバシー権の新たな形として「忘れられる権利」や「削除権」といった権利も注目されています。

「忘れられる権利」とは、2006年以降にインターネット上でのプライバシー保護を考える際に検討され、導入された権利であり、別名「削除権」や「消去権」とも呼ばれています。

事例に見るメリット・デメリット

例えば、ネット上に掲載される「前科」情報等の問題を考えてみましょう。

ネットニュースで犯罪事実や刑事裁判などの情報が実名で掲載されると、その後も半永続的にそのページが残ってしまう問題があります。

前科検索結果事例

本人が執行猶予期間や刑期を終えて社会復帰を試みる際、過去の前科情報がネット上に掲載されたままであることが、様々な不利益をもたらすことがあります。

例えば、就職をしようとする際に実名で検索され、前科が明らかになり、採用されないこともあり、また、近所で噂になり子供が学校でいじめられたり、生活が困難になり家族と共に引っ越さなければならなくなることもあります。

このような不利益を軽減するために、犯罪事実が軽微である場合や一定期間が経過した場合に「忘れられる権利」を認め、情報の削除請求権を導入する考えが浮上しました。こういったことについてメリットがあると考えられています。

実際に、日本でも、忘れられる権利を認めた裁判例は存在します。

ただし、権利性を認めるかどうかについてはまだ議論が続いており、否定する裁判例も存在しています。まだ、どこまで権利性を認めるべきかという議論が熟しているとは言えません。

なぜなら「知る権利」「表現の自由」などとの兼ね合いの問題があるからです。

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まとめ

今回は、プライバシー権や変わりゆく権利内容について解説しました。

プライバシー権は、もともとは「私生活上の情報をみだりに公開されない権利」でしたが、今は自己情報コントロール権としての積極的プライバシー権の側面も持つようになってきています。

最近では、個人情報保護法の導入や忘れられる権利の議論など、プライバシー権の伝統的な形が変化しようとしています。

インターネットの普及とともに、今後も進化が予想されるため、今後のプライバシー権の動向については注視していくと良いでしょう。

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