実名報道された!不起訴なら名誉毀損やプライバシー侵害?裁判例解説

  • 実名報道された!無実なんだから名誉毀損やプライバシー侵害で訴えればいいの?

実名報道された後、後に不起訴となった場合や、起訴されても名誉を傷つけられたと感じる場合もあるでしょう。

実名報道の際に、プライバシー侵害や名誉毀損によって相手側を訴えることは可能でしょうか。犯罪者にもプライバシーの権利は存在するのでしょうか?

また、慰謝料を請求することは可能でしょうか。

この記事では、実名報道された場合に、後に不起訴や冤罪となった際や起訴になったときにも、プライバシー侵害や名誉毀損で訴えることができるか、裁判例について説明します。

実名報道とプライバシー侵害・名誉毀損の関係

実名報道は重大な意義もありますが、被害者や被疑者(容疑者)の名誉毀損・プライバシー侵害を引き起こすこともあります。

表現の自由・報道の自由との対立

それでも実名報道が認められているのは、報道機関の「表現の自由」があるからです。

国民の「知る権利」を保障するためにも、プライバシー権だけでは簡単には「表現の自由」を制限できないという考えが裁判例でも多く見られます。

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ここからは、いくつかの事例をご紹介します。

実名報道が名誉権・プライバシー権侵害になる場合もあるとした裁判例

平成22年、逮捕されたことを報じられた男性が、数社の新聞社を相手取って、プライバシー侵害を理由として損害賠償請求訴訟を行いました。

最高裁が上告を棄却したことで、最終的に男性の主張するプライバシー権侵害の事実は認められず、逮捕の事実を誤って報道した毎日新聞にのみ110万円の慰謝料支払いを命じた高裁の判断が確定しています(最決平成28年9月13日)。

東京高判平成28年3月9日(上記最高裁の原審)
各事件における被疑事実の内容,被疑者の地位や属性などの具体的事情によっては,プライバシー保護の要請が上記のような意味での公共性に勝り,被疑者段階における実名等の個人情報を含む犯罪報道が,名誉毀損あるいはプライバシーの違法な侵害に当たる場合があることは否定できない。しかし,(本件は軽微な事件ではないため)控訴人の氏名を含めて犯罪の報道をすることが公共の利害に関する事実の報道に当たらないとすることはできない。また,本件各記事についての具体的事情の下でプライバシー侵害による不法行為も成立しない

ここで注意したいのが、実名報道についてプライバシー侵害を否定しているわけではなく、今回のケースでは該当しないと述べたに過ぎないという点です。

ここから、実名報道全てがプライバシー侵害にならないわけではなく、事案によっては名誉毀損やプライバシー侵害となる可能性があることがわかります。

次にご紹介する事例でも基本的には同様の判断がされています。

名誉・プライバシーと実名報道する公益の比較衡量で判断した裁判例

沖縄県の中学校教員が少女とみだらな行為をしたとして逮捕された事件を、報道機関が実名報道を行ったことに対して「名誉を毀損され教員を辞することを余儀なくされた」として損害賠償を求めた事例です(福岡高判平成20年10月28日)。

裁判所は、実名報道によって被告人が不利益を被ることがあるものの、事件の内容が国民の重大な関心事であり、実名を公表されない利益がこれを公表する報道の利益を優越しているとはいえず「不法行為にはあたらない」としました。

1つ前の事例で、実名報道がプライバシー侵害になる可能性があると述べました。

この裁判例でも、名誉毀損やプライバシー侵害で損害賠償請求できるかどうかは、その事件が公表される利益(国民への周知・犯罪予防など)と公表されない利益(実名報道された人のプライバシー保護)を比較して判断するとされています。

実名報道後に嫌疑不十分で不起訴となった事例

犯罪の嫌疑をかけられて実名報道をされた男性が、後に嫌疑不十分で不起訴となり、被疑者段階で警察が実名を公表することが「名誉毀損にあたる」と提訴した事例があります。

ここでは、報道が行われた時点までに警察が充分に捜査を尽くして情報を収集しており、公表当時に有罪と認められるだけの資料がそろっていたのであれば、名誉毀損にならないと判断しています(東京高判平成11年10月21日)。

ただ、これは国家賠償請求の事案で、この記事で中心的にご説明してきた「報道機関による実名報道に対する損害賠償請求」とは異なります。

あくまで警察の公表についての判断です。

被害者の実名公表が話題となった京アニ放火事件

2019年7月に起きた「京都アニメーション放火事件」では36人が亡くなりました。

犠牲者の実名公開に対して、遺族や会社の意向としてはプライバシーに配慮して公表を差し控えるようにしていました。

ただ、マスコミからの実名公開要請が強く、40日後に25名の実名を公表することになりました。

ここで、事件の重みを共有し、教訓とするため実名公開をするべきだとする報道各社と、遺族の「そっとしておいてほしい」というプライバシーへの配慮が対立し、SNS上でも大きく話題となりました。

被害者の実名報道は今まで公然と行われてきましたが、それが本当に正しいのかという議論のきっかけになった事件であるといえるでしょう。

実名報道なら「逮捕歴削除」を目指す

プライバシー侵害・名誉毀損で訴えられない場合

上述のように、実名報道が行われた場合に、プライバシー侵害や名誉毀損で訴えることができない状況が生じることがあります。

このような場合、逮捕歴が永続的に実名で公表されることが懸念されるのでしょうか。

つまり、適切な対策が求められます。

具体的には、逮捕歴の非公開化や情報の修正・削除が必要です。さらに、個人が過去の経験から学び、成長する機会を得られるような環境を整えることが重要です。

近年では、「忘れられる権利」といった概念も注目されていますが、その適用が日本においてはまだ課題とされています。

逮捕歴削除は条件によって行える

このような状況が今も存在するため、実名報道された場合には、強力なネット弁護士による逮捕歴の削除を求めるケースが見られます。

ただし、これを実現するには特定の条件が必要であり、必ずしも可能とは限りません。

まずは、自分のケースがGoogle上の逮捕歴削除が可能かどうかを判断するために、無料相談などを受けることが重要です。

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まとめ

実名報道された場合、後に不起訴や冤罪となった際や起訴になったときにも、プライバシー侵害や名誉毀損で訴えることができるかについて説明しました。

プライバシー侵害での訴訟もありますが、現実的には逮捕歴削除により解決を図ることが一般的と言えるでしょう。

実際にネット上で実名報道された場合、弁護士に相談することが第一歩となります。

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