リツイートで名誉毀損!逮捕され罪になる・損害賠償になるって本当?
リツイートでデマを拡散してしまった場合にどうなるのかを解説します。損害賠償請求事件の実態と背景、デマ拡散リツートは何…[続きを読む]
SNSのTwitter(ツイッター)を運用している方は、下記のような経験・事例をご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような晒し・嫌がらせ・迷惑行為は、名誉毀損にあたる可能性があると言えます。
できることならそのツイートを削除させ、犯人の身元を特定して損害賠償などをしてもらいたいものですよね。
そこで今回は、Twitter(ツイッター)のツイート・メンション・リプライなどに誹謗中傷・悪口が書かれた場合、削除する方法と流れ、裁判の事例や開示請求のタイムリミット、悪口を書き込んだ犯人の身元や住所を特定するための手順、開示請求は難しいのか、されなかった場合、失敗した場合はどうすればいいのかなどをご紹介させて頂きます。
目次
SNSの一つであるTwitter(ツイッター)では、以下のような悪質な嫌がらせや悪口の事例が多発しています。
Twitterは匿名で利用することができ、所謂「捨て垢」というサブアカウントも難しくなく大量に作ることができます。
また、140字という「ひと言」で簡単にツイートできると同時に、クリックひとつで拡散する機能があるため、誹謗中傷や名誉毀損といったトラブルが起きやすいのです。
Twitterで匿名相手から名誉毀損された後、その人の身元を特定して損害賠償請求に成功した裁判例があります。
被害者である女性は、2017年から2019年にかけて、同一人物からアカウントを変えて何回も名誉毀損のツイートをされていました。
Twitter社に通報するも「違反していない」として対応してもらえず、最終的に「発信者情報開示請求→通信ログの保存請求→警察による本人特定」という過程を経て裁判に移行しています。
裁判の結果、名誉毀損と認められ、損害賠償263万8000円の支払いが命じられました(そのうち慰謝料は200万円)。
また、謝罪文の交付及び謝罪文が交付されるまで1日1万円の支払いをすることも命じられました。
この判決は、今までTwitterでの名誉毀損や誹謗中傷の解決は難しいと苦しんでいた人たちが、匿名でも損害賠償請求にたどり着けることを証明する画期的なものであると言えます。
また、裁判官の裁量に委ねられている慰謝料の額として、200万円という高額な請求が認められたことも高く評価されています。
また「リツイートだけ」で損害賠償を請求できた例もありました。
とは言っても、Twitter上で悪口を書かれた場合、特に下記2点について良く分からない点も多いでしょう。
上記については、Twitterだけではなく他のSNSやサイトにも当てはまる悩みですので、解説は別途ページに譲ります。
ただ、昨今は「侮辱罪」をはじめ厳罰化され、改正刑法も成立し、また開示請求の難しくなくなり、ハードルが下がりつつあります。
そのため、今後、Twitter上のグレーな悪口も次々と情報開示される事が予測されます。
そのため、積極的に「開示請求によるアカウント削除」「晒しに対しての名誉毀損賠償請求」などを行っていくことをおすすめします。
では、具体的にどのように相手の悪口を削除し、犯人特定・賠償を受けることができるのか、ここからはステップごとに流れを見ていきましょう。
今晒されている誹謗中傷ツイートを相手に削除してもらわなければ、時間が経つにつれてさらに拡散され、被害が広がってしまいます。
そこで、まずは該当ツイートを削除しましょう。
Twitter社に通報することで誹謗中傷ツイートが削除できる可能性があります。
通報するには、ツイート内容がTwitterの利用規約や法令に違反していることが必要です。
そのため、まずはTwitterが禁止している事項について確認しましょう。
Twitterでは以下のようなツイートが禁止されています。
【参考】Twitterルール
誹謗中傷ツイートがこれらの禁止行為にあたっていることを説明して、通報による解決を図ってみましょう。
こちらのフォームから削除依頼をしてみてください。
Twitter社に通報をしても削除するかどうかはTwitter社の判断となるため、先述した事例のように「違反していない」として対応してもらえないケースもあり難しいところです。
というのも、Twitter社にとっては誹謗中傷ユーザーも利用者の1人であり、過度な規制をすることで利用者を減らしてしまうことを危惧しているからです。
Twitter社に通報をしても削除されない場合は「削除の仮処分」によって法的に対処することを検討してみましょう。
”仮処分”とは、正式な裁判の前に裁判に勝訴したときと同様の状態を仮で確保することができる手続きのことです。
通常の民事訴訟では削除請求が認められるまで時間がかかり、その間に拡散され続けてしまいます。
一方、削除の仮処分であれば訴訟より短期間・低コストで請求を認めてもらうことができるので、迅速に対応することができるのです。
削除の仮処分が認められるには、①被保全権利と②保全の必要性の要件を満たす必要があります。
つまり、名誉毀損で言えば、
ということを主張し、ツイート内容などの証拠を裁判所に提示する必要があります。
申立てから発令までは大体1~2か月程度かかります。
また、もし削除が認められても相手が削除しなかった場合は、強制執行をすることができます。
なお、この申立てをする際に相手方となるのは匿名相手本人ではなく、Twitter社となりますので注意してください。
自分ひとりでは難しいケースもあるので、ネットに強い弁護士に依頼するのもおすすめです。
上記の手段で誹謗中傷ツイートが削除できたとしても、それで安心というわけではありません。
一度ツイートが削除されてアカウントを凍結されても、相手はまた違う捨て垢を作り、貴方の個人情報を晒したり誹謗中傷をしてくる可能性もあります。
それを防ぐためには、相手の身元を特定して直接損害賠償を請求する必要があります。
相手を特定する手順・流れは以下の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
匿名相手を特定するには、まずTwitter社に「発信者情報開示請求」を行い、IPアドレスやタイムスタンプを入手する必要があります。
IPアドレスやタイムスタンプはネット上での「足跡」のようなもので、これがわかることで投稿者が利用する「プロバイダ」を特定できます(プロバイダとは、スマホでいうドコモやソフトバンクのような通信会社のことです)。
発信者情報開示請求は裁判所で申し立てる必要があります。
Twitter社は外国企業なので、発信者情報開示の仮処分は東京地方裁判所(※)で行うことになります。
※民事訴訟法3条の3第5号、10条の2、民事訴訟規則6条の2より
特定にはIPアドレスやタイムスタンプが必要ですが、基本的に一定期間を過ぎると、つまりタイムリミットが来ると、その情報を削除してしまうプロバイダが多いです。
Twitterも同様で、プライバシーポリシーによるとログデータの保存期間は最大18カ月、削除されたアカウントの復活可能期間は30日間としています。
しかし、Twitterの捜査機関向けの説明をしているページでは、IPログの保存期間は「ごく短期間」としか明記されていません。
どうやら判決文からの情報によると、実際にはアクセスログを2ヶ月程度しか保存していないようです(令和2年(ワ)第1995号 発信者情報開示請求事件より)。
保存期間というタイムリミットが過ぎてから申立てを行うと、特定がかなり困難になってしまいますので注意しましょう。
誹謗中傷していたアカウントが削除された場合であっても、Twitter及びプロバイダにデータが保存されている期間であれば相手の特定は可能です。
しかし、誹謗中傷されたツイートの証拠を残せなかった場合は裁判所に提示できる証拠がなくなってしまうため、投稿者の特定や損害賠償請求がかなり困難になるでしょう。
もし、少しでも誹謗中傷だと感じた場合は、状況がひどくなる前に一応証拠としてアカウントのスクリーンショットをとっておくようにしましょう。
プロバイダが特定できたら「発信者情報消去禁止の仮処分」を行い、通信ログの保存を請求しましょう。
プロバイダは通常、投稿が行われてから3~6か月程度が経過すると発信者に関する情報を消去してしまいます。
消去されてしまうと、その後に開示命令が出ても「無い情報は開示できない」と言われて犯人を特定できません。
そのため、「投稿者に関する情報を削除しないで保存しておく」ことを裁判所から命じておいてもらうのです。
仮処分によって情報が保存されたら、いよいよプロバイダに対して発信者情報開示請求を行い、氏名など特定に必要な情報を入手します。
できれば任意で開示を受けたほうが時間的にも費用的にも負担が軽いので、まずはプロバイダに任意で開示してもらえるよう、要求してみましょう。
ただ、多くの場合には拒絶されてしまうので、プロバイダの本社や営業所のある場所の地方裁判所で「発信者情報開示請求訴訟」として提起することになります。
判決によって開示が認められると、プロバイダは投稿者に関する以下のような情報を開示してきます。
これにより、ようやくツイートの犯人を特定できます。
発信者情報開示の仮処分をしてから、実際に投稿者情報の開示を受けるまでの期間としては、半年以上かかることが多いです。
なお、2020年にプロバイダ責任制限法の改正に向けて、総務省が「発信者情報開示の在り方に関する研究会」を立ち上げています。
今後、法改正により個人情報の開示請求がより簡単になる可能性があります。併せてご参照ください。
自分で開示請求をしようとしても難しくて、できずに失敗してしまう場合もあります。
その場合は、ネット誹謗中傷に強い弁護士に相談・依頼してみるもの良いでしょう。
当サイトでも全国のネット誹謗中傷に強い弁護士を掲載しているので、難しくて開示請求できなかった人・失敗した人は参考にしてみてください。
投稿者が特定できた場合、民事訴訟と刑事告訴の2つの方法で相手に責任追及をすることができます。
裁判所に名誉毀損による損害賠償請求を提起することで、あなたの名誉やプライバシー権などを侵害したことに対する慰謝料を求めることができます。
開示請求と同じく、こちらも訴訟となると多額の費用と時間を要します。
そのため、まずは任意の支払いを求め、犯人が応じない場合に訴訟を起こすようにしましょう。
名誉毀損があったと裁判官が判断した場合、損害賠償と同時に謝罪文の交付を命じることができるケースもあります。
投稿者を警察に通報して逮捕してもらったり、刑事告訴をして侮辱罪や名誉毀損罪で刑事罰を与えてもらうことも可能です。
刑事告訴の場合、被害者が被害内容とそれが犯罪の構成要件に該当することを説明した被害届や告訴状を警察署に提出します。
投稿者を厳重に処罰してほしい、という旨もしっかり記載しておきましょう。
このとき、証拠も一緒に提出しないと警察は動いてくれません。
ツイートのプリントアウトやスクショ等、明確にわかる証拠を用意してから訪問しましょう。
被害内容としては、名誉毀損罪・侮辱罪・業務妨害罪・信用毀損罪などが成立する可能性があります。
ところで「警察が情報開示請求をして、相手の住所や身元特定をしてくれることはないの?」と疑問に感じている人もいるでしょう。
実は、民事裁判を行わずとも、刑事告訴を行うことで警察が相手の身元を特定してくれることもあるようです。
前述した裁判例ではこの方法によって特定をしています。
ただ、警察には民事不介入の原則があるため、事件性がなければ動いてくれない傾向にあります。
とはいえ、近年ではネット上の誹謗中傷が問題視されてきており、書類送検する事例も増えてきています(木村花さんや中川翔子さんの事例など)。
十分に証拠を用意して警察に相談すれば、一般人でも取り合ってくれるかもしれません。
自分が名誉毀損をされており、実際に悪影響を受けているということを証明できるようにしておきましょう。
Twitter上で、どこから誹謗中傷かと強いて言うのであれば、①行き過ぎた言葉になっていないか、②相手の人格を攻撃していないかを確認するのが良いでしょう。
例えば、「クソ」「気持ち悪い」といった、相手を侮辱するような表現は基本的に誹謗中傷にあたると言えます。また、「ブスは消えた方がいい」「低能は家に引きこもってろ」というような、相手の能力・性格・容貌を含めた人格を貶す言葉、つまり人格攻撃は、誹謗中傷となるでしょう。
IPアドレス開示請求(仮処分) | 着手金:約15万円〜20万円 報酬金:約15万円〜20万円 |
印紙代:2,000円 |
契約者情報開示請求(裁判) | 着手金:約20〜30万円 報酬金:約20〜30万円 |
印紙代:13,000円 |
つまり、TwitterでIPを開示してもらい、発信者開示請求を行うとなると、100万円ぐらいがかかる可能性があると言えます。
もちろん、弁護士費用は、事務所によって異なりますが、高額になることは考慮しておく必要があります。
以上がTwitter(ツイッター)で悪口の投稿を書かれた場合の削除方法、開示請求の難しさ、自分のことかもと思う悪口を書かれた場合、また開示請求のタイムリミットや嫌がらせ・誹謗中傷されたときの対処の方法です。
捨て垢で行われるいじめ・悪口・誹謗中傷行為は、被害者に大きな傷を残します。
もし悪質な投稿内容に苦しんでいるのであれば、単純な仕返しではなく、相手を特定して止めるよう注意しましょう。
ただ、開示請求はできない場合、失敗してしまう場合など一般人では難しい手続きも多くあります。また逆に開示請求された人も対応に苦慮している場合もあるでしょう。
自分でやるには難しいと感じたら、なるべく早めにネット上の誹謗中傷対応に力をいれている弁護士に依頼することをお勧めします。