名誉毀損罪とは|構成要件は?どこから罪?時効は?親告罪?わかりやすく解説
ネットで他人を誹謗中傷すると「名誉毀損」となって相手から刑事告訴や損害賠償請求をされる可能性があります。一方誹謗中傷…[続きを読む]
名誉毀損罪や侮辱罪などで、未成年の中学生や高校生は訴えられる可能性はあるのでしょうか?。
近年では、中学生や高校生など未成年のころからネット・SNS上での活動をしており、その際に、名誉毀損や侮辱罪にあたる誹謗中傷をしてしまうケースも非常に多いです。
もし、そんな中で自分が未成年から被害にあったときに「相手を特定したい」「慰謝料を払ってもらいたい」と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、もし加害者が未成年だった場合、訴えることができるのか疑問をもつ方もいるのではないでしょうか。
今回は、加害者が未成年であった場合の名誉毀損罪、民事訴訟について解説していきたいと思います。
最近は小学生でもスマートフォンをもつ世の中となっています。
そのため、未成年者が軽い気持ちで誰かを誹謗中傷や名誉毀損をすることも少なくありません。
では、被害者は未成年相手に訴えることができるのでしょうか。
結論からいうと、未成年でも訴えることは可能です。ただし、成人の場合と違う点もいくつかありますので、後ほど確認していきましょう。
なお、名誉毀損の定義や具体的な慰謝料請求方法については、別途記事が詳しいので併せてご参照下さい。
名誉毀損の民事と刑事の2種類の訴訟では、”自ら行った行為について責任を負うことのできる能力・善悪を判断して行動する能力”である「責任能力」の有無によって未成年への対処が変わってきます。
それぞれポイントを見てみましょう。
刑法41条には、以下のような規定があります。
このように、刑事事件において14歳未満は一律に責任能力がないとされ、年齢を満たしていなければ罪に問われることはありません。
一方、14歳以上の子どもの場合は成人と同様に逮捕・拘留されます。
よって、中学生・高校生の場合は逮捕されるケースもあります。未成年とは言え、小学生の場合は逮捕まではされません。
先述したように、14歳未満の子は刑罰を科されることはありませんが、そのまま日常生活に戻れるというわけでもありません。
場合によっては、児童相談所に送致されるといった措置が取られます。
14歳以上の場合は、原則家庭裁判所に送致されて少年審判が行われます。
そして保護観察処分や児童自立支援施設・児童養護施設・少年院への送致など、適切な処分が下されます。
民法では「責任能力のない未成年は賠償の責任を負わない」とされています。
ですが、民法では刑法のように一律で責任能力をもつ年齢が定められているわけではありません。
そのため、相手によって責任能力の有無が変わることがあります。
ただ、過去の裁判例から見ると、責任能力の認定の下限年齢は大体11~14歳前後とされており、12歳程度であれば責任能力を持っていると判断されることが多いようです。
そのため、中学生・高校生でも訴えられる可能性があるのです。
未成年である加害者に責任能力が認められ、名誉毀損が成立すれば、損害賠償請求で慰謝料の支払いが命じられる可能性が高くなります。
ここで、未成年は資力(お金)がなく慰謝料の支払いができない、と主張されることがあるかもしれません。
しかし、支払い能力が慰謝料の額に左右されることはなく、親権者が代わりに損害賠償責任を負うことになるのが一般的です。
ちなみに、相手に責任能力が認められなかった場合は泣き寝入りしなければならないのかというと、そうでもありません。
未成年の監督義務者(親権者)が義務を尽くしていないとき、慰謝料の支払いと同様に監督義務者が未成年者の賠償責任を代わりに負うことになります。
このように、未成年であっても民事・刑事の両方で責任を問うことができます。
慰謝料請求の方法や相場については、以下のページをご参照ください。
実際に、未成年による名誉毀損によって慰謝料の支払いが認められた事例、民事訴訟があります。
最後に裁判例を見てみましょう。
この事案は、当時13歳の中学2年生であった男性が、ある弁護士に向けてインターネット上で名誉毀損の書き込みを行っていたというものです。
被告は電子掲示板に、原告について「前科有り」「児童ポルノ」「依頼者に暴行」「もみ消し」といった虚偽の事実を書き込んでいました。
これにより、原告は社会的評価を低下させられ、弁護士としての業務も妨害されたとして民事訴訟を起こしました。
裁判所は投稿が名誉毀損であることを認め、以下のように判断しました。
『被告は、本件各書込み当時、13歳の中学2年生であったものであるが、同年齢頃の未成年者について、成人に比べ、社会経験の少なさ等から適切な判断をする能力において劣る面は否定できないと考えられる一方、弁護士という職業がどのような仕事を行っているかを抽象的に理解できる程度には成長しているとも考えられる。』
『したがって、本件においては、被告の年齢が、慰謝料額に対して有意に作用する事情となるとまではいえない。また、加害者の支払能力についても、本件において、同様に慰謝料額を左右するとまではいえない。』
そして、被告に40万円の損害賠償の支払いを命じました。
以上、名誉毀損の加害者が未成年(高校生、中学生、小学生)だった場合に訴えることができるのかどうかについて解説してきました。
ここまでご説明してきたように、相手が未成年であっても責任を問うことは可能です。また、慰謝料についても成人と同様の支払い額が認められます。
そのため、もし名誉毀損罪や侮辱罪にあたるネット誹謗中傷に悩んでいるのであれば、相手が未成年だったとしても諦めずに弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。