犯罪の実名報道の基準とは?名誉権とプライバシー権との関係を解説!

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犯罪が行われたとき、実名報道が行われることが多いです。

いったん実名報道が行われてしまうと、ネット上のニュースなどでは消してもらうこともできずに永続的に残ってしまうため、大変な不利益を受けることになります。
ただ、犯罪があっても必ずしも実名報道が行われるとは限らず、場合によっては匿名で報道が行われることもありますが、実名報道に基準はあるのでしょうか?

実名報道された場合、それがプライバシー権侵害にならないのかなども気になります。
そこで今回は、犯罪の実名報道がどこまで許されるのかについて、解説します。

1.実名報道とは?

そもそも、実名報道とはどのようなものなのかを押さえておきましょう。

実名報道とは、被疑者や被告人の氏名を明らかにして、犯罪事実の報道をすることです。まだ逮捕されていない段階でも実名報道されるケースがあります。

実名報道をされると、本人にはとても大きな不利益があります。

その人が本当の犯人ではないケースでは、自分はやっていないにもかかわらず、周囲から白い目で見られたり酷い嫌がらせを受けたりしますし、家族が学校や職場でいじめを受けることもあります。
その人が本当に犯人であったケースでも、刑を終えたらまじめにやり直そうとするものですが、更生しようとするとき、実名報道が残っていることによって過去の犯罪歴を知られてしまい、就職ができなかったり家族が嫌がらせを受けたりして、不利益を受けます。どこに引っ越しをしても、近所にバレたり噂になったりするたびにまた引っ越しをしないといけなくなり、逃げ続ける生活になるので非常に苦痛です。

このように、実名報道が行われると、本人にとっては大変な問題になることをまずは押さえておきましょう。

2.実名報道に基準はあるのか?

犯罪が行われたとき、実名報道が行われるケースと匿名になるケースがあります。このように、実名報道が行われるかどうかについて、明確な基準はあるのでしょうか?
この点、法律上特に実名報道の基準はありません。報道機関内で通用しているガイドラインなどもありません。
実名報道は、報道機関の自主規制に任されているので、同じ事件であってもある報道機関の場合には実名報道が行われていて、ある報道機関の場合には匿名報道になっているということもあります。

たとえば、ある報道機関の実名報道基準は、以下のようなものとなっています。

2-1.少年事件の場合

未成年が犯罪の嫌疑をかけられている少年事件については、実名報道は行われません。これは、少年法61条が明確に少年の実名報道を禁止しているからです。
報道時に成人していても、犯罪時に未成年であれば、未成年扱いとなって匿名報道となります。
ただ、少年法61条には罰則規定はありません。そこで、時折週刊誌などで行きすぎた報道が行われて騒ぎになることなどもあります。
また、少年事件であっても例外はもうけられていて、

  1. 殺人や放火などの重大事件で、犯人が逃走中で再び凶悪な犯罪を行う可能性があるとき
  2. 指名手配中の被疑者の捜査に協力する目的があるとき
  3. 少年保護の見地からしても、それより社会的利益を優先すべき特殊なケース

上記のような場合には、実名や写真の掲載を認める慣行があります。

2-2.少年事件以外の一般の基準

少年事件以外の場合、報道は原則実名となります。特に政治家や高級官僚、捜査関係者などの公的な立場の人が、仕事に関わる内容で捜査の対象となったときには、ほとんどの場合、実名報道が行われます。(参考外部サイト:逮捕後に実名報道される基準は?

逮捕時にいったん実名報道が行われると、その後も原則として実名報道が続きますが、状況によっては例外的に匿名に切り替わることもあります。

2-3.精神障害者のケース

精神障害者が被疑者となっている場合、本人が心神喪失状態で「刑事責任能力」を持たないとされた場合には、実名報道は行われません。

心神喪失かどうかの判断に際しては、精神鑑定などの科学的なデータや捜査機関の取材をもとに総合的に検討して決定しますので、単に精神科への入通院歴があるだけでは匿名の理由になりません。
また、犯罪時に心神喪失状態でも、薬物中毒者が一時的に錯乱状態になって犯罪を犯した場合には、実名報道もありえます。
犯罪事実凶悪で、犯人が逃走しているケース、実名で指名手配されているケースなどにも実名報道が検討されます。

2-4.別件逮捕の場合

別件逮捕が行われたケースでは、別件逮捕拘留中は原則として匿名にしますが、本件逮捕に切り替わったら実名報道に切り替えます。
ただし、別件であってもそれが本件に直接関連する場合や別件自体が重大犯罪である場合などには、実名報道が行われるケースもあります。

2-5.任意捜査、書類送検の場合

任意捜査や書類送検が行われた段階では、一般的に匿名報道となりますが、社会的責任が重いケースなどでは実名報道をします。いったん匿名で報道した後、容疑者が所属している官公庁が実名で処分を公表した場合などには、実名への切り替えを検討します。

2-6.微罪処分の場合

微罪事件の場合には、原則実名ですが、報道の必要性の程度や実名を記載する場合に過度な制裁になると考えられるケースでは、匿名も選択できます。
このような実名報道の基準は、各社によってもさまざまなので、上記はあくまで一例と考えると良いでしょう。

3.実名報道と名誉権、プライバシー権

実名報道をされると、報道された本人は重大な不利益を受けますが、このことが本人の名誉権やプライバシー権を侵害することはないのでしょうか?

確かに、実名報道によって、本人の名誉権やプライバシー権をある程度侵害することは事実です。しかし、報道機関には表現の自由があり、国民には表現の自由の裏返しの権利としての知る権利もあります。
そこで、実名報道によって名誉権やプライバシー権侵害があるかどうかを判断する際には、それと表現の自由・知る権利のどちらを優先すべきかが問題になります。

この点、実際に犯罪が行われた場合には、原則的に表現の自由が優先すると考えられています。以下で、いくつかの事例とモデルケースをご紹介するので、見てみましょう。

3-1.実名報道がプライバシー権侵害とならないと判断された事例

平成22年、逮捕されたことを報じられた男性が、数社の新聞社を相手取って、プライバシー権侵害を理由として損害賠償請求訴訟を行いました。
このとき、最高裁判所は、男性の主張するプライバシー権侵害の事実を認めず、逮捕の事実を誤って報道した毎日新聞にのみ110万円の慰謝料支払い命令を出しました。

ただし、この判断があっても捜査段階の実名報道が絶対に違法にならないということではありません。上記の事件で裁判所は、実名報道について「プライバシー侵害に当たる可能性はある」と指摘しながらも「今回はそのケースに当たらない」としているからです。
よって、事案によっては実名報道がプライバシー権侵害となる可能性はあります。

3-2.嫌疑不十分で不起訴処分となった場合の名誉権

ある刑事事件で犯罪の嫌疑をかけられて実名報道をされた男性が、後に嫌疑不十分となった事例を考えてみましょう。このとき、男性の名誉権は侵害されているのでしょうか?
このような事件において、判例は報道が行われた時点までに警察が充分に捜査を尽くして情報を収集しており、公表当時に有罪と認められるだけの資料がそろっていたのであれば、違法にはならない(名誉毀損にならない)と判断しています(東京公判平成11年10月21日)。
逆に、警察があえて嘘の事実をマスコミに公表したのであれば名誉毀損になります。

3-3.被疑者が否認しているのに自白と報道されたケース

被疑者や被告人が否認している場合に、自白しているとの報道が行われたら、名誉毀損になるのでしょうか?
この場合には、裁判所は、「警察は犯罪事実に関して正確に広報すべき職務上の義務を負う」と判断して、違法性を認め、虚偽の報道をされた人に対する慰謝料支払を命じました。(神戸地判平成14年10月29日)。

4.実名報道と少年法61条

上記の実名報道の基準の項でも少し触れましたが、少年法61条は実名報道を禁じています

少年法は、未成年が今後の成長によって大きく変化する可能性があることなどにより、成人と異なる取扱をすることを認めています。
少年が犯罪を犯しても家庭裁判所で審判が行われるだけであり、成人と同じような刑事裁判が行われることはありません。
少年の場合には、懲役刑などが適用されることはなく、少年院に入れられて数年過ごすだけで社会復帰します。

このように、少年法は、徹頭徹尾少年を守る方向で規定されている法律なのです。そこで、少年の更生を阻害するような実名報道は禁じられます。

具体的には、「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」としています。(インターネットによる公表は禁止されていません。)

ただ、この規定については罰則が設けられていないので、週刊誌などが実名報道をしてしまうケースがあります。

そのような場合には、報道機関の名誉毀損となって損害賠償請求をされる可能性はあります。
また、条規の条文を見ればわかりますが、少年法によって禁じられるのは「家庭裁判所の審判に付された少年、公訴提起された少年」であり、逮捕されたものや指名手配者は含まれません。

そこで、逮捕後家庭裁判所送致前の実名報道は規制されないことにもなります。

さらに、原則実名報道を禁じるという少年法の取扱に対しては、表現の自由の不当な侵害であるという批判があり、実際に少年事件の実名報道が行われて、裁判で争われた事例などもあります。

5.実名報道への対応方法(真実か?誤認逮捕か?誤報道、不起訴)

5-1.記事削除請求をする

自分が犯罪を犯した場合や犯罪の嫌疑をかけられた場合、成人していれば原則として実名報道が行われてしまいます。
実名報道がネット上などに残ってしまうといつまで経ってもその情報が拡散され続けます。就職しようとしても、企業が実名検索機能などを使って調査をするので結局前科がバレてしまい、就職できないことも増えてきます。
このように、実名報道がネット上に残っていると、更生によって大きな妨げとなりますので、その記事を削除してもらうことが必要です。

5-2.損害賠償請求をする

報道機関によって違法に実名報道が行われている場合には、報道機関に対して損害賠償請求をすることができるケースがあります。特に誤報道が行われたケースなどでは、損害賠償請求が認められる可能性が高くなります。

5-3.記事削除請求や損害賠償請求が認められる基準

ネット上の記事を削除させたり損害賠償請求をしたりするためには、記事の掲示行為が不法行為に該当する必要があります。不法行為と言えるためには、名誉毀損やプライバシー権侵害が成立することが必要です。

報道内容が虚偽の場合には、名誉権侵害となりやすいので、記事削除請求が認められやすくなります。たとえば、実際には犯罪を犯していないのに犯罪を犯した人だと断定して報道されている場合や、逮捕されていないのに逮捕されたと掲載されている場合などです。このような場合には、名誉毀損にもとづいて相手の新聞社などの報道機関に対して損害賠償請求もできますし、記事削除の請求もできます。

これに対し、報道内容が事実のケースでは、対応が少し難しくなります。

この場合、当然には報道行為に違法性が認められないので必ずしも記事削除請求をすることはできず、本人のプライバシー権と報道の必要性の利益衡量をすることになります。

ここで、前科報道についての削除請求が認められるためには、その人の現在の生活状況や事件の性質、社会への影響、実名報道の必要性などを総合的に評価して判断すべきとした裁判もあります。
そこで、事実に基づく犯罪の実名報道が行われた場合には、上記の基準に照らして個別に記事削除が妥当かどうか、判断していくことになります。
実際に記事削除請求や損害賠償請求が認められるかどうかが自分で判断できないときには、弁護士に相談してみると良いでしょう。

5-4.記事削除請求、損害賠償請求をする手続き

実名での前科情報を削除してもらいたい場合や損害賠償請求をしたい場合には、報道機関に対して直接記事削除や慰謝料支払いを求めます。ただ、話合いでは解決できないことがほとんどなので、実際には弁護士に依頼して裁判を起こす必要があるでしょう。

実名報道をされて更生の妨げになって悩んでいるなら、まずはネット問題に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

今回は、犯罪の実名報道についての注意点を解説しました。実名報道が行われると、特にネット上に報道が残ってしまう場合などに大きな不利益を受けることになります。
いつまで経っても世間に忘れてもらうことができず、就職などでも不利になって更生の妨げになります。

報道機関では、少年事件については原則匿名にしますが、その他の場合、実名掲載をするかどうかについては、報道機関ごとの自主規制に任されているのが実情です。

前科の実名報道が行われた場合、それが名誉毀損やプライバシー権侵害になることもあり、その場合には、報道機関に対して記事削除や損害賠償請求をすることが可能です。これらの法的手続きは、素人が自分ですすめるのは困難なので、ネット問題に強い弁護士に相談して依頼すると良いでしょう。

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