プライバシー権と自己情報コントロール権との違いをわかりやすく解説
近年プライバシー権の重要性が高まり、その権利内容が拡大されてきています。そこで今回は、プライバシーの侵害になる基準や…[続きを読む]
「LINEのスクショ晒しは違法?晒されたけど!」この問いについて、多くの人々が疑問を抱いています。
近年、LINEのチャットやSNS上でのスクリーンショット(スクショ)が、個人のプライバシーを侵害する行為として問題視されています。この記事では、この問題に焦点を当て、スクショ晒しの法的側面と、被害を受けた場合の対処法、Lineの内容を第三者に見せることと法律について詳しく解説します。
どのような状況で違法とされ、どのように対処すべきなのか、皆さんに明確な情報を提供します。
友達との間のプライベートなやりとりと思っていたLINEの内容が勝手にX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSに晒されていたら、誰しも怒りを覚えることでしょう。
このような「晒し」行為は、法的に見ても違法の疑いが強いと言えます。
その理由について、以下で詳しく解説します。
日本国憲法は、すべての人に「プライバシー権」を保障しているものと解されています。
プライバシー権とは、その意義については諸説ありますが、少なくとも「自己に関する情報をみだりに公開されない権利」を含むものと理解しておけば良いでしょう。
プライバシー権は、日本国憲法の明文で保障されているものではありませんが、13条に規定される「幸福追求権」(人間としての幸せを追求する基本的な権利)の一環として認められるものと解されています。
個人的な内容を含むプライベートなLINEのやり取りをSNSに晒す行為は、まさにこのプライバシー権の侵害に該当する可能性があります。
そして、プライバシー権の侵害により被害者が損害(精神的な損害を含みます。)を被った場合には、民法上の不法行為が成立します。
なお、プライバシー権による保護の対象となる情報とは、以下の要件をすべてみたす情報です。
晒されたLINEの内容に上記の要件をすべてみたす情報が含まれる場合には、プライバシー権の侵害に基づく不法行為が成立することになります。
LINEをSNSなどに晒す行為には、民法上の不法行為だけでなく、名誉毀損罪という犯罪が成立する場合もあります。
名誉毀損罪の構成要件は、「①公然と②事実の摘示によって③他人の④社会的評価を低下させる」ことです。
LINEの晒し行為がこれらの構成要件をすべて満たす場合には、晒した人に名誉毀損罪が成立する可能性があります。
不特定または多数の人に伝わる可能性のある状態を言います。
SNSなどインターネットにおける書き込みであれば、公然性の要件はほとんどの場合みたされるものと考えられます。
人の社会的評価を低下させるような具体的事実を指摘することを言います。
LINEのスクショや文章は、そのようなやりとりが実際に行われていたという事実を示すものになりますので、LINEの晒し行為は事実の摘示の要件をみたすのと考えられます。
発言を同意なく晒された人自身や、その発言の中で誹謗中傷されている人などがここで言う「他人」にあたります。
名誉毀損罪が成立するには、問題となっている投稿などが、客観的に見て他人の社会的評価を低下させる性質の内容になっている必要があります。
上記から、LINEのスクショをSNSに晒す行為については、その投稿が被害者の社会的評価を低下させるような内容になっていると言えるかどうかがポイントになると言えます。
個人的なLINEsクショを勝手にSNSなどに晒されてしまった場合、その状態をそのままにしておくわけにはいきません。
違法な情報拡散をストップし、かつ被害者の名誉を回復する必要があります。
では、どのような方法で拡散防止・名誉回復をすれば良いのでしょうか。
以下でその方法について解説します。
X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSでは、書き込んだ本人が投稿を削除することができます。
そのため、まずはLINEを晒した本人に対して投稿を削除するよう要請しましょう。
その際、先に解説したように、プライバシー権の侵害による不法行為や、名誉毀損罪が成立する可能性があるということを説明して、投稿の違法性を理解してもらうことが有効です。
しかし、書き込んだ本人が投稿の削除に応じてくれない場合もあります。
また、匿名掲示板などでは、書き込んだ本人が投稿を削除することができないケースもあります。
こうした場合には、SNSや掲示板の管理者に対して投稿の削除を要請する方法が考えられます。
SNSや掲示板の利用規約には、個人情報や、プライバシー権の侵害・名誉毀損に当たるような内容を含む投稿を行うことを禁止しているものも多いです。
SNSや掲示板の管理者に訴えれば、利用規約などに従って投稿を削除してくれる可能性があります。
SNSや掲示板の管理者が投稿の削除に応じてくれない場合には、SNSや掲示板の管理者を相手方とし、プライバシー権や名誉権の侵害を理由として、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てることが考えられます(民事保全法23条2項)。
仮処分命令が発令されれば、SNSや掲示板の管理者は投稿を削除する義務を負うことになります。
ただし、投稿削除の仮処分命令が発令される場合には、申立人は裁判所に対して30万円から50万円程度の担保金を預ける必要がある点に注意してください。
詳しい手続きの内容については弁護士に相談しましょう。
SNSにLINEスクショを晒されたことにより経済的・精神的な損害を被った場合には、民事訴訟を提起し、LINEを晒した人に対して損害賠償を請求することができます。
民事訴訟を提起する場合には、仮処分申立ての手続同様、弁護士に依頼することがおすすめです。
LINEをSNSに晒されたことにより名誉を侵害された場合は、被害者は裁判所に対して、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることを請求することができます(民法723条)。
この名誉回復措置には、投稿の削除や謝罪文・訂正文の掲載などが含まれます。
名誉回復措置の請求は、損害賠償請求と併せてすることができます。
したがって、不法行為に基づく損害賠償を民事訴訟で請求する場合には、併せて名誉回復措置の請求も行うと良いでしょう。
LINEスクショをSNSに晒す行為が名誉毀損罪に該当する悪質なものである場合には、投稿者を刑事告訴することも検討しましょう。
名誉毀損罪は親告罪、つまり検察官が被疑者を起訴するためには、被害者の刑事告訴が必要となる犯罪類型とされています。
したがって、被害者が投稿者への処罰を求める場合には、警察に対して刑事告訴をしましょう。
LINEには、トーク画面を簡単に切り取ってスクショ保存やシェアをすることができます。スクショ画像を、無断でSNS上に晒す行為を、「LINEスクショ晒し」と言います。
LINEをSNSに晒す行為にはプライバシー権の侵害や名誉毀損罪が成立し得ると解説しましたが、それでは単に友達などの第三者・他人に対して、プライベートなやりとりの中で勝手にLINEの内容を見せるなどの行為も違法なのでしょうか。
この点、プライバシー権の侵害や名誉毀損罪が成立するためには、LINEのスクショや文章などを「公開」する必要があります。
「公開」とは、不特定多数の人が閲覧可能な状態に置くことを言います。
プライベートでLINEの内容を第三者に見せる場合には、特定の人に見せているだけですので、LINEの内容を「公開」していると言うことにはなりません。
したがって、この場合プライバシー権の侵害や名誉毀損罪は成立しません。
ただし、第三者にLINEの内容を見せた上で、その内容をSNSなどに晒すようそそのかしたり、「この人に入れ知恵をしておけばきっとSNSに晒すだろう」などという確信の下でLINEを見せたりした場合には、プライバシー権の侵害や名誉毀損罪の成立が問題となる可能性があります。
このように、LINEスクショをSNSに晒す行為には違法性が認められる可能性が高く、プライバシーの侵害が拡大する前に早急に拡散防止の措置などを講ずる必要があります。
しかし、考えなければならない問題は多いため、専門家の助言を得て対処するのが得策と言えます。
もしLINEの晒し被害に遭ってしまったら、弁護士に早めに相談をして、自分の権利の保全・回復を図りましょう。