家族間でプライバシーの侵害は成立する?損害賠償はできるのか
今回は、家族間のプライバシー侵害について解説します。家族間でプライバシー侵害は成立するのか、プライバシー侵害にあたる…[続きを読む]
そんなとき、ついスマホを開いてLINEを勝手に見てしまった、ということはよくある話です。
でも、このような男女のいざこざが法律に反する可能性があることをご存じでしょうか。
最悪の場合、プライバシー侵害で慰謝料請求や、不正アクセス禁止法違反で懲役を科されることがあるのです。
そこで今回は、人のlineを勝手に見る罪、LINE盗み見の法律違反と不倫発覚の際の安全な証拠集めについて解説していきます。
結論からいうと、LINEの盗み見は場合によって犯罪になります。具体的には、民法上ではプライバシー侵害、刑事上では不正アクセス禁止法違反にあたります。これらについて詳しく見てみましょう。
プライバシー権とは、みだりに私生活を公開されない権利・自分の私生活に関する情報をコントロールする権利のことをいいます。
ここでは、行政に提供しているような個人情報だけでなく、人に知られたくないプライベートで私的な情報も含まれています。
憲法上、個人のプライバシー権は重要な権利です。
プライバシーを侵害するようなことがあれば、民法上不法行為として損害賠償請求(民法709条)を受ける可能性があります。
これは、赤の他人間は勿論、夫婦間など密接な関係の間においても認められているものです。
したがって、勝手にパートナーの携帯をチェックすることはプライバシー権の侵害になる可能性があるということです。
では、どの程度の盗み見がプライバシー侵害になるのでしょうか。
例えば、スマホのポップアップ画面に浮気の証拠となるようなメッセージがたまたま出てきて見てしまった場合は、自ら見ようとしたわけではないのでプライバシー侵害とは言い難いでしょう。
しかし、自分の意思で勝手にパートナーのスマホの中身を見たのであれば、プライバシー侵害にあたる可能性が十分にあります。
この場合は、パートナーのプライバシー権を侵害するだけでなく、送り手である浮気相手とされる人のプライバシー権や、双方の通信の秘密も侵害する可能性があります。
そして、先述したように、プライバシー侵害をすると損害賠償請求を受ける可能性があります。
もっとも、盗み見したことによってプライバシー侵害に基づく損害賠償請求を受けたとしても、夫婦やパートナー間である場合は親密な間柄ゆえに慰謝料額が低くなる可能性が高いといえます。
特に、浮気などを疑って見てしまったケースは損害賠償自体が認められないこともありますので、見てしまったからと言って過度に心配する必要はありません。
ただあまり褒められた行為ではないことは覚えておきましょう。
不正アクセス禁止法は「何人も、不正アクセス行為をしてはならない」(同法3条)として、不正アクセス行為を行った場合は、「3年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に処するとしています(同法11条)。
不正アクセス行為の定義は複雑ですが、簡単に言えばネットワーク経由で他人のID・パスワード等を使って他人のPCやスマホ等にアクセスすることです(同法2条4項)。
LINEで言えば、既にスマホ端末にダウンロード・保存されている内容を見る場合は、ネットワーク経由でもなければIDやパスワードを使ってもいないため、通常は不正アクセス行為にはなりません。
仮に端末やLINEアプリに暗証番号などのロックがかかっていても、その解除がネットワークを経由していなければ、やはり不正アクセス行為にはなりません。
とはいえ、犯罪にならないからLINEを勝手に見ていいわけでもないことはよく理解しておきましょう。
また、LINEはアプリを起動するだけで通信する場合もあり、このような場合には不正アクセス禁止法違反に該当する可能性があります。
では、別のスマホでリアルタイムで閲覧できるクローン携帯はどうなるのでしょうか(2020年9月現在、LINEは原則複数台からのアクセスができないため、クローン携帯・クローンスマホの危険性も減ってきています)。
この場合、持ち主の許可なくインターネットを使ってデータの送受信が行われているため、ほぼ争いなく不正アクセス禁止法違反になります。
浮気の証拠を残すためにこのような手法をとる方もいますが、2017年11月には逮捕者も出ている行為ですので、絶対にやらないようにしましょう。
不正アクセス行為にあたるとともに、非常に強いプライバシーの侵害にもなります。
なお、不正アクセス禁止法違反に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
「浮気の証拠としてLINEを見るのは正当な理由にならないの?」「それも人のlineを勝手に見る罪になるの?」と疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
刑事訴訟であれば、違法な手続きや手段で得た証拠は証拠にすることができないとする「違法収集証拠排除法則」というものがあります。
簡単に言えば、刑事事件ではプライバシーを侵害して取得したデータなどは証拠にできないとされています。
ただし、離婚などで問題となるのは民事事件です。
民事訴訟法上はそこまで厳格性が求められていませんので、プライバシーを侵害して得た証拠でも、実際には証拠認定される場合が多いです(刑事事件ですら証拠になることが意外とあります)。
ただ、デジタルデータは改ざんが疑われると証拠として認められないことがあるので、改ざんが疑われないように証拠を残す必要があります。
とはいうものの、どうすれば法律違反なく浮気などの証拠をゲットできるのか、気になるところです。ここからは、比較的安全に浮気や不倫のデータを集めるときの注意点についてご説明していきます。
まず、LINEの盗み見のデータだけに頼らず、LINE以外にも、不倫相手とご飯を食べた場合の飲食店の領収書やホテルを利用した場合クレジットカードの明細、仲良さそうに映る写真なども証拠になります。
LINEだけでなく、幅広い証拠を集めるほうが無難です。
LINEで不倫の証拠を集める場合は、この点にこだわって集めるようにすると良いでしょう。
デジタルデータは改ざんが疑われる可能性があります。
それでも証拠として認められる可能性はありますが、リスクを犯さないためにもデジタルデータを転送するのではなく、本体ごと画面を撮影するようにしましょう。
会話の画面だけでなく、その画面がパートナーのスマホの画面であることを証明するため、携帯番号が表示されているプロフィール画面も撮影しておくとさらに良いでしょう。
LINEの証拠を集める具体的な方法をお伝えしましたが、法律違反で罰せられては元も子もありません。
刑事罰のある不正アクセス禁止法は勿論、過度なプライバシー侵害にも気を付けないと、最悪の場合は証拠として認めてもらえないだけでなく、上述した罪に問われる可能性もあります。
一番良い方法は、パートナーの許可をとることです。
「正直に話せば許す」と言って上手く話し合いに持ち込み、携帯を見せてもらうことが一番安全な方法です。
実際に、あなた自身がまだ許せる余地があるなら、一度許してあげることも考慮してみるべきかもしれません。
どうしても許せない場合、許可を得て収集した証拠を後に利用することもできます。
もしどうしてもLINEを見たい場合、通信を一切せずにLINEを見るだけなら不正アクセス禁止法違反にはなりません。
とはいえ、開くだけで通信を行うようなケースもありますので、どうしても見たい場合は機内モードにしてからLINEを開くようにしましょう。
不倫などがあった場合、慰謝料を請求したいと思っても、具体的にどんな手続きが必要なのかわからない方も多いでしょう。
そんなときは、夫婦トラブルや離婚に詳しい弁護士に相談してみましょう。
また、上記で述べてきたように、スマホを利用した証拠の集め方は法律違反を伴うリスクがあります。
もし、スマホから証拠を得る必要がある場合は、ITに詳しい弁護士に話を聞いてみるのも1つの手です。具体的にどのような点に注意すれば違法になりにくいのか、教えてくれるはずです。
最近では、無料相談を受付けている事務所も数多くあります。一度検討されてはいかがでしょうか。