開示請求とは|費用・裁判の流れなど簡単に解説【安い?高い?】

東京地方裁判所
「誹謗中傷の書き込み犯人を特定したい!発信者情報の開示請求は、どうやってすればいいんだろう?」

インターネットの匿名掲示板やX(旧Twitter)などで誹謗中傷、プライバシー権侵害などの被害を受けたら、投稿の削除を求めると共に相手にペナルティを与えたいものです。

しかしこれら悪口が書かれたサイトでは投稿が匿名で行われるので、すぐに相手に損害賠償請求や刑事告訴することはできません。

そこで必要になるのが「投稿者(発信者)特定」の手続きと言えます。

今回は、ネットで誹謗中傷被害を受けたときに投稿者を特定するための「発信者情報開示」の仮処分と訴訟の方法、流れ、費用は安いか高いか、裁判、IPアドレスについてご説明します。

安い?高い?発信者情報開示や消去禁止にかかる仮処分の費用は?

先に費用について解説しましょう。

先述した、発信者情報開示や消去禁止の仮処分をすると、費用がかかります。

仮処分は、基本的に申立の印紙代が2000円、郵便切手代が数千円かかりますがいそういった費用はやすいと言えます。それ以外に「担保金」が大きいです。

だいたい、1件について10~30万円程度必要です。

しかし、これは基本的に後で取り戻せます、つまり安いか高いかそこまで懸念する必要はないでしょう。

より大きな費用となるのが「弁護士費用」です。発信者情報開示請求や仮処分申立ては、法的な専門知識が必要となるため、多くの場合、弁護士に依頼することになります。

弁護士費用については、一般的な相場は別途記事で解説しますが、事件の難易度や進行状況によって、これ以上にかかる可能性もあります。

名誉毀損や プライバシー侵害は、金銭的にも精神的にも甚大な被害を被ることがあります。迅速かつ適切な法的対応をするためには、一定の費用負担は避けられないということです。

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発信者情報開示の仮処分に必要な2つの要件とは

発信者情報開示の仮処分が認められるには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • ① 被保全権利
  • ② 保全の必要性

仮処分の要件① 被保全権利とは

発信者情報開示請求の被保全権利は、プロバイダ責任制限法4条1項の定める「発信者情報開示請求権」です。

プロバイダ責任制限法4条1項では、開示請求者の「権利が侵害されたことが明らか」な時に限り、開示請求を認めています*。

*このことを「権利侵害の明白性」と言います。

つまり、名誉権やプライバシー権、営業権などが侵害されていることを「かなり高いレベル」で疎明*する必要があります。

*「疎明」とは、証明より少し軽い程度の事実の根拠提示のことです。

仮処分の要件② 保全の必要性とは

また、2つ目の「保全の必要性」の要件は以下のとおりです。

投稿内容が一般人の感覚からして名誉権などの権利を害することが明らかで、このまま放置しておくと被害者の「社会的評価が下がっていくおそれ」が高いこと、内容が虚偽であって公益性、公共性もないことなどを、具体的に主張・疎明することを要求されます。

このように、被保全権利と保全の必要性について疎明できると、裁判所において発信者情報開示命令が下りて、サイト管理者からIPアドレス・タイムスタンプの他、保有している場合は電話番号が開示されます。

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裁判所の管轄は注意が必要

仮処分を行うときは、裁判所の管轄に注意が必要です。

  • 相手が日本の法人や個人の場合には「相手の住所地の地方裁判所」に申立を行います。
  • 問題となるサイトがX(旧Twitter)やFacebook、2chや5ch、Googleなどの場合、管理者・運営会社が外国法人の場合、管轄する裁判所は「東京地方裁判所」となります。

つまり、弁護士に依頼する場合は、東京や全国対応の弁護士事務所が無難とも言えるでしょう。

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発信者情報開示請求の流れとは?

発信者情報開示請求の流れは、以下のようになります。

  • ① サイト管理者に発信者情報開示請求の仮処分
  • ② 開示されたIPアドレス、タイムスタンプからプロバイダを特定
    ※この段階で携帯番号が入手できた場合は、弁護士照会によって特定できる可能性
  • ③ プロバイダに発信者情報削除禁止の仮処分
  • ④ プロバイダに発信者情報開示請求訴訟
  • ⑤発信者情報開示後の流れ

流れ①:発信者情報開示の仮処分とは

投稿者を特定したいとき、まずは発信者情報開示の仮処分をせねばなりません。

これは、問題の投稿や記事のある「サイトの管理者」に対し、投稿者のIPアドレスやタイムスタンプ、携帯の電話番号の開示を求める請求です。

ネット上のサイトでは、多くの場合、いきなり投稿者を特定することは不可能です

まずはサイトの管理者から投稿者の情報を開示してもらい、そこからプロバイダを明らかにして、プロバイダに本人の個人情報を開示してもらう必要があります。

そこで、まずはネット上のサイトの管理者や運営会社に、投稿者のIPアドレスや電話番号を開示してもらうのです。そのための方法が「仮処分」です。

発信者情報開示の仮処分を申し立てるときには、該当記事の「削除請求の仮処分」も同時に行うことが多いです。

そうすれば、問題の記事を削除すると同時に発信者情報も開示してもらえて、手間が省けるからです。

流れ②:IPアドレスなどからプロバイダを特定

仮処分によって入手した投稿者のIPアドレスやメールアドレスなどの情報から、利用しているプロバイダ(インターネット接続事業者)を特定する必要があります。

一般的には、Whois検索などのインターネットツールを使って、IPアドレスからプロバイダを調べます。例えばIPアドレスが「...」であれば、そのアドレス帯を管理しているプロバイダ会社がわかります。

投稿者がスマートフォンを使っていた場合は、プロバイダはドコモ、au、ソフトバンクなどの携帯電話通信会社になります。

プロバイダが判明すれば、次は発信者情報の開示を請求します。

流れ③:プロバイダへ発信者情報消去禁止の仮処分

相手の利用しているプロバイダが明らかになったら、まずは「発信者情報消去禁止」の仮処分を行う必要があります。

これは、プロバイダが保管している投稿者の情報を削除しないように求める仮処分です。

通常、プロバイダは投稿者の情報を3か月~6か月程度しか保管しません。ところが発信者情報開示請求の仮処分や訴訟などを行っていると、半年以上かかってしまうこともあり、その間に必要な投稿者情報を消されてしまうかもしれないのです。

そのようなことになったらせっかく裁判で情報開示命令が出ても意味が無くなってしまうので、先に発信者情報消去を禁ずる仮処分を発令してもらっておく必要があります。

発信者情報消去禁止仮処分も、発信者情報開示の仮処分と同じ「仮処分」の手続きなので、被保全権利の存在と保全の必要性を疎明すれば認めてもらえます。

流れ④:プロバイダへ発信者情報開示請求訴訟

このようにして、発信者情報消去の仮処分まで認められたら、いよいよプロバイダ(docomoやau、softbank等)に対して発信者情報開示請求を行います。この場合に利用する手続きは、仮処分ではなく「訴訟」です。

発信者情報・発信者情報開示請求訴訟の流れ

以下で、訴訟の流れを簡単に説明します。

提訴

まずは、プロバイダに対し、投稿者に関する個人情報(氏名や名称、住所、メールアドレス)を開示するよう求め、裁判を起こします
すると、裁判所からプロバイダに対し、訴状や証拠が送られます。
プロバイダからは「答弁書」や反証のための証拠が提出されます。

期日

期日においては、双方が提出した主張書面や証拠をもとに、争点を整理していきます。「権利侵害があるかないか」などが主に争われます。名誉権やプライバシー権、著作権などの権利侵害を証明できれば、2~3回程度で結審します。

判決

きちんと権利侵害の事実を証明すると、裁判所はプロバイダに対して発信者情報開示命令の判決を出してくれます。プロバイダは通常控訴せず、判決が確定すると自主的に発信者情報を開示してくれます。

開示される情報

発信者情報開示請求によって開示されるのは、主に投稿者の氏名、住所、メールアドレスです。

流れ⑤:発信者情報開示後の流れ

投稿者の個人情報を取得したら、以下のような方法で相手に責任追及しましょう。

損害賠償請求

まずはあなたの名誉権やプライバシー権、著作権などが侵害されたことについて、相手に損害賠償請求できます。

名誉権やプライバシー権侵害の場合には「慰謝料」を請求できますし、著作権や商標権などを侵害された場合には、相手が不当に得た利益の返還を請求することなども可能です。

あなたが事業者で営業損害を受けた場合などには、営業損失の補償も請求できます。

損害賠償請求をするときには、判明した相手の氏名と住所を使って「内容証明郵便」で請求書を送りましょう。そして、相手と話し合いをして、必要な賠償金を支払ってもらいます。

名誉権回復

次に「名誉権回復」の措置が必要となるケースもあります。たとえば相手の投稿によってあなたの名誉が汚されて、あなたがSNSを使いづらくなったり日常生活に支障が及んだりしているならば、相手に「謝罪広告」が「間違っていました」という投稿をさせることにより、あなたの正当性を示すことができます。

相手に損害賠償請求をするときに、同時に名誉権の回復措置も求めると良いでしょう。相手が合意すれば、合意書を作成して必要な措置をとらせることが可能です。

二度と嫌がらせをしないことを約束させる

ネット上で嫌がらせの投稿をするような人は、何度も同じことを繰り返す傾向があります。いったんは発信者情報を特定してペナルティを与えても、また同じことをされてはいたちごっこです。

そこで、二度と嫌がらせの投稿をしないこと、または二度とあなたにかかわらないことなどを約束させましょう。約束を破ったら違約金を払うことなども付け加えておくと効果的です。

刑事告訴

相手の行為が悪質な場合には、刑事告訴をして刑事罰を与えることを検討しましょう。

ネット誹謗中傷で成立する可能性のある犯罪は、以下の通りです。

名誉毀損罪

事実の摘示によってあなたの社会的評価を下げられた場合の犯罪です。

侮辱罪

事実を摘示せず罵倒された場合に成立します。

業務妨害罪、信用毀損罪

あなたの業務や経済的信用を傷つけられた場合に成立する犯罪です。

著作権法違反

著作権を侵害されたときの犯罪です。

商標法違反

あなたの商標を勝手に利用されたときに成立します。

相手がストーカーの場合にはストーカー規制法違反、相手が元恋人で性的な画像を投稿された場合などにはリベンジポルノ禁止法違反となるケースもあります。

犯罪被害に遭ったら許すべきではありません。お一人で立ち向かうことが難しければ、弁護士などの専門家に相談して、適切な対処をしてもらいましょう。

改正!携帯の電話番号があれば訴訟は不要か?

2020年8月31日、発信者情報開示に関する省令が一部改正されました。

簡単に言うと、最初のサイト運営会社などにIPアドレス等を開示請求する段階において、認証に使われている携帯の電話番号も開示対象に含むというものです。

電話番号を入手すれば弁護士照会によって相手の氏名や住所が取得できる場合があるため、2段階目のプロバイダ(docomoやSoftbankなど)に対する発信者情報消去禁止の仮処分や発信者情報開示請求訴訟は不要になります。

つまり、従来2回裁判手続きを必要としていたものが1回で済むようになり、情報が削除されてしまう期限のことを気にしなくてよくなったのです。

これにより、今まで難しかったものが、今まで以上に迅速に被害者の救済ができると考えられています。

勿論、すべてのサイト運営会社や管理人が投稿者の電話番号を入手しているわけではありませんので、電話番号を開示してもらえなかった場合は従来通りの手続きが必要になります。

また、電話会社が弁護士会照会に答えてくれない場合もあり、その場合も従来どおりの手続きが必要です。

難しくなんてない!誹謗中傷は開示請求で対抗する

今回は誹謗中傷の開示請求の流れ、費用、裁判などを簡単に解説いたしました。ネット上で他人の名誉を汚す行為は卑劣です。

発信者情報開示の仮処分や情報消去禁止の仮処分、その後に続く訴訟のことなど考えると気が滅入って諦めそうになりますし、対応も難しそうですが、ここで諦めると相手が増長し、被害が広がるだけです。

一人で取り組むのは困難でしょうから、信頼できる弁護士を探して助けになってもらいましょう。

ネット誹謗中傷を受けると、精神的に追い詰められてしまうこともありますが、助けてくれる人がいると随分気持ちも変わってくるものです。

一人で悩まずに、専門家に相談してみてください。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事はネット誹謗中傷弁護士相談Cafeを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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