オリンピックでSNS誹謗中傷はなぜ?アスリート・スポーツ選手の事例
連日メダル獲得のニュースが流れて盛り上がっている「東京2020オリンピック」。しかし最近、五輪選手に向けた誹謗中傷が…[続きを読む]
陸上女子、体操女子の選手から相談が寄せられたことで、2020年から話題となっている「女性アスリートの性的画像被害」。
スポーツ選手を性的対象とし、盗撮画像をネット上にアップロードする行為が問題となっております。東京で行われたオリンピックでも問題視され、現在でも様々な対策が講じられています。
また、2024年7月のパリオリンピックもやってきましたよね。
女子ビーチバレーなどでも大会運営側により、撮影禁止の対策をとったことがニュースにもなりました。
そこで今回は、体操女子、女性アスリートの性的画像被害の概要や盗撮被害の問題点、ユニフォームへの対策などを解説していきたいと思います。
女性アスリートの性的画像被害は、2020年7月に陸上女子のトップ選手らが日本陸連のアスリート委員会に相談したことで表面化しました。
彼女たちは無断で胸や尻などをアップで撮影される被害に悩まされていたといいます。しかも、被害はただ性的な写真を撮影されるだけに留まりません。
上記のような悪質な行為も行われています。
中には、わざわざ赤外線カメラを使って女性アスリートの下着を撮影するような人もいます。
ただ真剣に競技に取り組んでいるだけなのに、知らないうちに性的な写真を撮られて悪用されるのは誰だって気分が良いものではありませんよね。
体操女子の女性アスリートの性的画像被害には、様々な問題点があります。
ひとつひとつ見ていきましょう。
女性アスリートが不適切な写真や盗撮被害に遭うと、大きな心理的ダメージを受けてしまい、競技パフォーマンスが低下する恐れがあります。
競技中は100%の集中力が不可欠ですが、「自分の映像が不適切に利用されるのでは」という不安が常に頭をよぎってしまうでしょう。そうなると、集中力が競技に完全に向けることができなくなります。結果としてパフォーマンスが最大限に発揮できなくなる可能性が高まるのです。
さらに、深刻なケースでは、トラウマから競技を離れざるを得なくなったり、スポーツそのものに対する情熱を失ってしまう選手も出てくるかもしれません。
このように、プライバシーの侵害は単なる個人の人権問題にとどまらず、アスリートの競技力そのものを損なう重大な問題となっています。選手が安心して競技に打ち込めるよう、ルール作りや倫理教育の徹底が急務となっているのが実情です。スポーツ界全体で、この課題に真剣に取り組む必要があります。
上記のように、世間ではこの被害を盗撮者側の問題ではなく、女性アスリート自身の問題であると言う人もいます。
しかし、言うまでもなく盗撮や不適切な撮影行為の責任は全て加害者側にあり、決してユニフォームの露出の多寡が問題の本質ではありません。ユニフォームのデザインは競技パフォーマンスを最大化するための合理的な配慮から生まれたものです。女性アスリートを性的な存在と決めつける発想こそが根本的に間違っています。
むしろ、そうした過剰で偏った視線が、被害に遭った女性アスリートの人権を著しく侵害し、精神的に深い傷を負わせかねません。被害者に責任を転嫁するような発言が横行すれば、女性アスリートが声を上げにくい空気が生まれてしまいます。結果として事態が表面化せず、被害が潜在化、深刻化する恐れがあるのです。
私たち全員が、女性アスリートの人権とメンタルヘルスを何よりも尊重し、加害者への断固たる姿勢を貫く必要があります。
性的画像被害は、陸上女子だけの問題ではありません。
スポーツの中では、女子バレーでも同様の被害が多くあるといいます。
さらに、成人したプロの選手だけでなく全国の中高生にも被害が拡大しており、SNSを通じて盗撮された画像で嫌がらせを受ける子どももいるようです。
「美人すぎる選手」などと形容して、不必要に性的視線を誘発している、スポーツに関係のない容姿を取り上げて報道と指摘される例もあります。アスリートの人格や競技力を尊重せず、一面的な外見だけを強調する報道姿勢が、間接的に被害を助長させかねません。
また、一部の視聴者やファンの中に「スポーツ観戦とはアスリートの肉体を見る機会」といった間違った認識がある場合も、問題の一因となっているでしょう。アスリートの人権尊重を欠いた偏った価値観が、被害拡大のリスクにもなり得ます。
実は、日本には盗撮を直接取り締まる法制度がありません。
そのため、自治体で定められている「迷惑防止条例違反」を理由として取り締まることが多いのが現状です。
しかし、このような条例は自治体が整備していないと使えないに加え、盗撮の定義に競技ユニホームが該当しなかったり罰則が軽かったりして抑止力が弱いといった問題があります。
一方、韓国やフランスなどの海外では性的目的の無断撮影は犯罪とされており、実際に法律に基づいて盗撮者が逮捕された事例もあります。
日本でも盗撮を犯罪とするような法制度を用意し、加害者を抑制する体制を整えることが大切だといえるでしょう。
女性アスリートの性的画像被害は、注目されるまで当事者以外には認識されにくかった問題でした。
そのため、スポーツ界の中でも盗撮や性的被害に対する意識がまだまだ低い部分もあります。
女性のユニフォーム姿がどのように悪用される可能性があるのか、講習などを通じて知ることが重要となっています。
加えて、選手が自由に服装を選べるような制度にしていくことも必要です。
また、特に未成年者は被害を受けたときに身近な人には言いにくく、相談できる人がいないという問題があります。
そこで、専用の相談窓口をつくるといった対策も必要とされています。
日本では盗撮に対する法制度がまだ十分ではないと先述しました。
しかし、最近では盗撮に向けた対策にも力を入れてきています。
ここからは、最近のニュースも一緒に現在の状況について見ていきましょう。
2020年11月13日、日本オリンピック委員会(JOC)は日本中学校体育連盟や全国高等学校体育連盟などの6団体と連名で、女性アスリートの性的画像被害の撲滅に向けた声明を発表しました。
と書かれたポスターや声明文が、各団体のHPとSNSで公開されています。
また、該当する写真の投稿があったときに、情報提供や通報ができる特設サイトも設置されました。
【参考:アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組みについて】
東京オリンピックで注目されたユニフォームの「ユニタード」を知っている人も多いでしょう。
体操女子のドイツチームが身につけた、足首までを覆うボディースーツをつけて注目を浴びました。
これについても「女性アスリートが性的対象にされることへの抗議」のために採用され、スポーツ選手を性的対象で見ようとする写真問題への対策と言えます。
この問題が注目される中、2021年の5月以降には女性アスリートの性的画像をネット上にあげた投稿者が逮捕されるようになっています。
容疑 | 詳細 | |
2021年5月11日 | 著作権法違反 | テレビ番組の女性アスリートの画像39点をアダルトサイトに無断転載したとして、サイトを運営する自営業の小山幸祐容疑者が逮捕された。 この男性は、今までも性的画像を集めたサイトを運営しており、広告収入で1億円以上稼いでいたという。 |
6月25日 | 著作権法違反 名誉毀損 |
テレビ映像から切り出したアスリートの画像17点をサイトに無断転載したとして、堺市のサイト運営会社員寺田祐三容疑者が逮捕された。 その後、「盗撮エロ画像」などのタイトルで女性アスリートの画像を掲載していたことから、名誉毀損容疑で追送検された。 |
7月15日 | 著作権法違反 | テレビ番組に映った女性スポーツ選手の画像を性的な目的でアダルトサイトに無断転載したとして、サイトを運営する千葉県鎌ケ谷市の男性・東京都小金井市の男性・中野区の男性が書類送検された。 |
盗撮罪がないことから、著作権侵害や名誉毀損罪といった方面での逮捕にはなりますが、性的画像の投稿の取り締まりが強化されてきていることがわかります。
このような摘発が増えた背景には、JOCによる警視庁への積極的な協力があります。
実際、2021年6月までに約1000件、7月に追加で約300件の被害情報を提供しています。
これによって警視庁はさらに摘発を進める方針をとっており、今後も逮捕者がでる可能性が高いといえるでしょう。
上記の3点以外にも、シンポジウムや研修会によって女性アスリートの性的画像被害の認知を広めたり、危険性を学ぶような機会も設けられたりしてきました。
オリンピック後も対策が強化されていくことを期待されています。
以前からJVAによりビーチバレー大会ではカメラ撮影の禁止を行っていました。
ただ、それに加えてスマホ・携帯電話などのでの撮影に制限をかける方向で検討されています。
以上、女性アスリートの性的画像被害について解説してきました。
今まではこの被害について、女性アスリートが声をあげたくてもあげられない、取り合ってもらえない状況が続いていました。
しかし、最近では数々の対策や規制が行われるようになり、被害を減らすよう努力されてきています。
今後の各団体の動向にも注目です。
なお、特設サイトへの性的画像の通報・情報提供は誰でもできます。
もし、一般の方でも悪質な投稿を見かけたら、サイトから通報してみてください。
その行動が、被害を減らす第一歩となるかもしれません。