法人に対する名誉毀損は成立する?企業批判は犯罪か

法人の名誉毀損

最近では5ちゃんねる(旧2ch)などのインターネット掲示板や、SNSが発達していますので、誰でも気軽に自分の意見を発信することができるようになりました。

ネット上にはしばしば、ブラック企業批判など、法人を攻撃する内容の書き込みが見受けられます。

中には、建設的なものだけでなく、単なる誹謗中傷に当たるものも含まれており、法人が風評被害を被ってしまう例も散見されます。

法人がネットの書き込みなどによって風評被害を受けた場合、書き込んだ人は何らかの法的責任を負うのでしょうか。

この記事では、「法人に対する」名誉毀損について、刑事・民事の両面から詳しく解説します。

法人に対しても名誉毀損は成立する

まず前提として、刑事・民事のいずれも、法人に対する名誉毀損は成立します。

 法人に対する刑事上の名誉毀損罪

刑法230条1項は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」について名誉毀損罪が成立するものと規定しています。

この「人」には、法人などの団体も含まれると解するのが判例・通説となっています(大判大正15年3月24日参照)。

したがって、法人に対して誹謗中傷などを行った場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

法人に対する民事上の名誉毀損(不法行為)

他人の名誉を毀損した場合、民事上は被害者に対して、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負担することになります。

不法行為に基づく損害賠償請求は、法人も当然に行うことができます。

したがって、法人に対して誹謗中傷などを行った場合には、民法上の不法行為に基づく損害賠償責任を負担する可能性があります。

法人に対する名誉毀損が犯罪になる場合

法人に対する誹謗中傷などが名誉毀損罪として刑事立件されるのは、どのような場合なのでしょうか。以下で解説します。

名誉毀損罪の構成要件

名誉毀損罪の構成要件は、「①公然と②事実の摘示によって③他人の④社会的評価を低下させる」ことです。名誉毀損罪の成立には、これらの構成要件をすべて満たすことが必要となります。

①公然と

不特定または多数の人に伝わる可能性のある状態を意味します。

インターネット掲示板やSNSへの書き込みであれば、ほとんどの場合この条件を満たすものと考えられます。

②事実の摘示によって

人の社会的評価を低下させるような具体的事実を指摘することを言います。

法人に対する名誉毀損の場合、「労働者を違法に長時間労働させている」「不正会計を働いている」「実は業績不振でそろそろ経営が傾く」などの事実を指摘する場合が考えられます。

③他人の

法人が「他人」に含まれることは、先に説明したとおりです。

④社会的評価を低下させる

客観的に見て、他人の社会的評価を低下させる性質の言動である必要があります。

公共の利害に関する特例に注意

名誉毀損罪の構成要件を満たす場合であっても、「公共の利害に関する特例」が成立する場合には、例外的に名誉毀損罪が成立しません(刑法230条の2第1項)。この点については次の項目で詳しく解説します。

名誉毀損は親告罪、被害者の刑事告訴が必要

インターネットなどで法人の名誉を傷つけるような書き込みを行ったとしても、直ちに警察に逮捕されて刑罰を受けるわけではありません。

名誉毀損罪は「親告罪」とされています(刑法232条1項)。

親告罪とは、被害者が名誉毀損の事実について刑事告訴をしなければ、被疑者を起訴できない(刑事裁判にならない)ということを意味します。

したがって、被害者が刑事告訴を行って初めて、名誉毀損が刑事事件として立件される可能性が生じることになります。

そのため、加害者は弁護士などを通じて被害者側に働きかけ、刑事告訴をしないか、取り下げるよう示談交渉を行うということがしばしば行われます。

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名誉毀損罪の法定刑・罰金

名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金とされています。

企業批判は名誉毀損にあたるのか?表現の自由との関係についても解説

上記に説明したとおり、企業などの法人に対して、その社会的評価を低下させるような書き込みなどを行った場合、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

しかし、企業の社会的評価を低下させるような内容であったとしても、中にはしっかりとした根拠に基づく正当な批判も存在します。

このような正当な批判まで名誉毀損罪の対象に含めてしまっては、人々は自由な言動を行うことができずに萎縮してしまい、表現の自由の観点から大きな問題があります。

そこで、刑法はこのような正当な批判については、名誉毀損罪の成立に関する例外規定を設けています。

公共の利害に関する場合の特例に該当すれば名誉毀損罪は成立しない

刑法230条の2第1項は、以下の3要件を満たす場合には、例外的に名誉毀損罪が成立しないものと規定しています。

①事実の公共性

摘示された事実が公共(一般の多数の人)の利害に関わる場合には、事実の公共性が認められます。

たとえば「労務・会計などにおける企業の不祥事などについての事実」は、公共の利害に関する事実に当たります。なお、公訴未提起の犯罪事実については、事実の公共性が無条件で認められます(刑法230条の2第2項)。

②目的の公益性

その発言の主たる目的が公益を図ることにあったと認められる場合に、目的の公共性が認められます。

たとえば、「企業の不祥事を暴いて社会に注意喚起をする目的」があったと認められる場合には、目的の公共性が認められる可能性が高いと言えます。

③内容の真実性の証明

公共の利害に関する場合の特例が認められるには、摘示した事実が真実であることを証明する必要があります。

発言者が誤信していた場合には、犯罪の故意が否定される場合あり

上記のとおり、公共の利害に関する場合の特例により名誉毀損罪の成立が否定されるには、発言者が摘示した事実の真実性を証明する必要があります。

しかし、発言者は摘示した事実が真実であることを信じていたものの、結果的に証明に失敗したという場合に名誉毀損罪で罰せられてしまうということになると、やはり表現行為に対する萎縮効果が生じてしまいます。

そのため、発言者の表現の自由と、批判された人の名誉に関する権利を適切に調整する必要があります。

最判昭和44年6月25日は、「行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるとき」は、犯罪の故意が否定され、名誉毀損罪が成立しないものと解すると判示しました。

よって、充分な調査の上で信頼できる根拠に依拠し、その事実が真実であるということについて確信を持った上で事実を摘示した場合には、事実の公共性と目的の公共性があることを条件として、「名誉毀損罪が成立しない」ということになります。

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民法上の「不法行為責任」は行為の違法性がなければ成立しない

民法上の不法行為責任に関しては、先述した刑法における「公共の利害に関する場合の特例」のような特別な規定はありません。

しかし、不法行為に基づく損害賠償の要件として、「行為者(発言者)の行為が違法」であることが必要となります。

たとえば、「公共の利害に関する特例」によって名誉毀損が成立しない場合や、事実の真実性を誤信したことについて、確実な資料や根拠に照らし「相当の理由がある」と判断される場合については、行為者(発言者)の行為には違法性がありません。

したがって、このような場合には民法上の不法行為も成立しないということになります。

書き込んだ人を特定する方法について

インターネット上に名誉毀損・風評被害に当たるような内容の書き込みが行われた場合、書き込みを削除し、さらに書き込んだ人の責任を追及するために、誰が書き込んだのかを特定する必要があります。

刑事手続きにおいては、警察が強制捜査権を行使し、掲示板・SNSの管理者やプロバイダーに対してIPアドレスなどの情報を提供させ、それに基づいて書き込んだ人を割り出すことになります。

一方で、民事上の損害賠償を請求したい場合には、どのように書き込んだ人を特定すればよいのでしょうか。その方法について解説します。

捜査機関から教えてもらう

刑事事件としての捜査が並行して行われている場合には、弁護士などを通じて捜査機関に対して照会すれば、回答を得られる可能性があります。

また、公訴が提起されれば公開審理となりますので、被疑者が誰かは自ずと明らかになります。

プロバイダーに対して発信者情報の開示を請求する

刑事告訴をしていないなどの理由で、刑事事件としての捜査が行われていない場合には、捜査機関の資料等を利用して書き込みを行った人を特定することはできません。

この場合、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称:プロバイダー責任制限法)という法律に基づき、プロバイダーに対して発信者情報の開示を請求することにより特定を試みることになります。

プロバイダー責任制限法第4条では、以下の要件をいずれも満たす場合には、プロバイダーは開示請求者に対して発信者情報(書き込みを行った人の情報)を開示する義務があります。

  • 侵害情報の流通によって、開示請求者の権利が侵害されたことが明らかであること
  • 発信者情報が損害賠償請求に必要であるなど、開示をすることについて正当な理由があること
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法人が名誉毀損の被害を回復する方法について

法人が名誉毀損に当たる書き込みなどにより損害を受けた場合、受けることのできる民事上の救済は、大きく分けて2通りあります。

不法行為に基づく損害賠償請求(ただし慰謝料請求は困難)

一つは、これまでも説明してきたように、不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができます。

名誉毀損行為により他人の権利を違法に侵害し、損害を与えた場合には、加害者は被害者に対して、その損害を賠償する責任があります(民法709条)。

法人に対する名誉毀損の場合、被害者である法人の経済的活動に支障が出るなどしたことによる逸失利益等が、賠償の対象となる損害の中心となるでしょう。

なお、法人の場合は、個人の場合と異なり、精神的な損害に当たる「慰謝料」を観念することは難しいと考えられます。しかし、名誉毀損行為により、法人に何らかの「無形の損害」が発生している場合には、それを金銭評価して損害額を計算することになります。

名誉回復の処分を請求

もう一つは、名誉毀損をした者に対して、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることを裁判所に対して請求することができます(民法723条)。

新聞などの紙媒体メディアや、テレビなどの公共電波によるメディアであれば、謝罪広告の掲載・放映などが、こうした処分の例として典型的です。

インターネット上の書き込みについても、web上またはその他の何らかの方法により、訂正記事の掲載をすることを命じられる可能性があるでしょう。

まとめ

基本的には、法人に対する誹謗中傷などについても、個人に対する場合と同様の要件の下で名誉毀損が成立し、投稿削除も犯人特定も可能と考えて良いでしょう。

むしろ、法人は誹謗中傷行為などに対して法的手段を講じるために必要な人員やノウハウを備えていることが多いと言えます。

そのため、軽い気持ちで誹謗中傷コメントなどをインターネット上に書き込んでしまうと、個人を相手にする場合以上にたいへんな事態となってしまう恐れがあります。

正しい法律知識と良識を持って、インターネットを利用しましょう。

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