リツイートで名誉毀損!逮捕され罪になる・損害賠償になるか
リツイートでデマを拡散してしまった場合にどうなるのかを解説します。損害賠償請求事件の実態と背景、デマ拡散リツートは何…[続きを読む]
最近、X(Twitter)やネット上に増えてきたデマやフェイクニュース。
実は、デマやフェイクニュースを発信した人以外に、拡散した人も罪に問われる可能性があるのです。
今回はデマやフェイクニュースについて、法的責任や騙されないための対策などをご紹介していきます!
基本的に「デマ」とは事実に反する噂のことです。
最近報道もされている、能登半島地震でデマあふれ、X(Twitter)の信頼性を疑われる事態となりました。
このような嘘の情報はSNSなどで度々大きく拡散され、問題視されています。
「フェイクニュース」とは嘘の情報で作られたニュースのことを指します。
ただ、面白いからといって冗談半分でフェイクニュースを発信してしまうと、ときにはとんでもないことに繋がってしまうことがあるので注意が必要です。
現在の日本にはデマを流す行為自体を罰する法律はありません。
しかし、デマやフェイクニュースを発信すると発信者に法的な責任が課され、刑事・民事の両方で問題になる可能性はあります。
それでは、どんな責任があるのか見てみましょう。
名誉毀損罪とは、公然と事実の摘示することで他人の社会的評価を低下させることを言います(刑法230条1項)。
例えば、「あいつは不倫している」「犯罪者だ」という悪いイメージを持たせるような内容をネットに書き込むことがあげられます。
名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役もしくは禁錮、又は50万円以下の罰金が科されることになります。
信用毀損罪とは、嘘の情報を不特定多数人に拡散したり、人を欺いたり錯誤させたりして人の信用を毀損することです(刑法233条前段)。
「あそこの会社は脱税している」「あの店は倒産寸前である」といった投稿をすることがこの場合にあたり得ます。
この罪が成立すると、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
ここで、「名誉毀損罪と信用毀損罪って同じじゃない?」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、名誉毀損罪は「人の社会的評価」が保護の対象で、信用毀損罪は「人の経済的評価」という財産面が保護の対象になっている点で異なります。
また、名誉毀損罪は「親告罪」であり、信用毀損罪は「非親告罪」という違いもあります。
加えて、実際に信用が害されている必要はなく、害される恐れがあれば足りるとされています。このような考え方を抽象的危険犯と言います。
偽計業務妨害罪とは、嘘の情報を不特定多数人に拡散したり、人を欺いたり錯誤させたりして人の業務を妨害することです(刑法233条後段)。
「倒産寸前」といった嘘の情報を流したことでその会社に電話が殺到し、まともに業務を行えなくなるなど、業務に支障をきたす恐れがある場合に成立します。
こちらも信用毀損罪と同じように、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
また、実際に業務が妨害された必要はなく、妨害される恐れがあれば足りる、抽象的危険犯の考え方がとられています。
上記のように誹謗中傷やデマを流したりすると、民事責任として不法行為に基づき慰謝料などの損害賠償請求がされる可能性もあります(民法709条)。
慰謝料の額は被害者に対する影響の度合でも変わるので、一概に金額の相場が決まっているわけではありません。
10万円程度から600万円という高額まで様々です。
ただ、デマやフェイクニュースを発信すること自体は自由である、ということに注意しなければなりません。というのも、情報の発信は憲法で保障されている「表現の自由」に含まれるからです。
しかし、表現の自由も公共の福祉によって制限を受け、他者の権利を害する場合には「表現の自由だから」では許されないこともあります。
また、名誉毀損は摘示した事実が真実か虚偽かは関係ありません。
よって、発信する際に「これはデマです」と注意書きをしていても、その投稿によって相手の評価が落とされた場合は名誉毀損罪になります。
デマやフェイクニュースを発信したことで逮捕されたり、訴訟を起こされた事例は多々あります。
ここからは、いくつかの事例をご紹介していきます。
2016年4月に起きた熊本地震の際に
「おいふざけんな、地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだ。熊本」
という文章と共に映画のワンシーンの写真がツイートされ、2万人以上に拡散されたことがありました。
もちろん、よく見れば街の風景も熊本とは違うことがわかるのですが、震災発生時という混乱の中で発信されたことで信じてしまう人が続出しました。
また、熊本市動植物園に100件を超える問い合わせが殺到し、HP上でも虚偽の事実であることを説明しなければならないような状態に陥ったことから、偽計業務妨害罪で投稿者が逮捕されました。
最終的には不起訴処分(起訴猶予)となっています。
2017年6月に東名高速道路で起きたあおり運転死亡事故では、容疑者の実家や勤務先がとある実在の会社であるというデマが流れました。
この会社と容疑者は全くの無関係でしたが、デマが流れたことでいたずら電話などが殺到し、休業せざるを得ない状況になりました。
この被害を受けて、デマ投稿をした8人に総額880万円の民事訴訟が提起されています(他3人とは示談)。
名誉毀損としてされた刑事告訴は不起訴処分となりましたが、2019年に小倉検察審査会が起訴相当と認め、再捜査が行われています。
2019年8月に常磐自動車道で起きたあおり運転の事件で、無関係な女性が加害者の車に同乗していた「ガラケー女」としてデマが拡散されました。
この女性は、Instagramに上がっていた服装が似ていた、加害者のアカウントをフォローしていたということだけを根拠に犯罪者呼ばわりをされ、悪質な誹謗中傷や、個人情報の漏洩によって大きな精神的ダメージを受けることになりました。
女性は、拡散源となった元愛知県豊田市議に名誉毀損として100万円の損害賠償請求を行いました。
トイレットペーパーが品薄になるというデマは大きく拡散され、あらゆる店で売り切れになるような影響を及ぼしました。
米子医療生活協同組合の職員がこのデマを流したとして先日謝罪が行われましたが、この職員は罪に問われることになるのでしょうか。
確定的なことは言えませんが、この職員は、トイレットペーパーが「品薄になる」と投稿したのであり、特定の店や会社に言及していない抽象的な表現です。この場合、業務妨害の危険がある行為とまでは言えないでしょう。
また、恐らくは特定の店の業務を妨害しようといった故意もない、又は立証が困難でしょう。
したがって、今回は罪に問われる可能性は低いと考えられます。
実際にトイレットペーパー等の購入に人が殺到した店舗では、従業員が疲弊したり、通常業務に手が回らなくなるなどの問題が発生したところもあるでしょう。
しかし、今回の投稿はやはり特定の店等に言及しておらず、そもそも不法行為と言えない可能性が高いです。また、仮に不法行為だとして、損害がいくら発生しているのか、投稿との因果関係があるのか等の問題は残ります。
したがって、店や企業等からの損害賠償請求も認められない可能性が高いでしょう。
ただ、所属組合が規則にそった対処をすると述べているように、ある程度の処分や世間からの批判は免れないでしょう。
デマやフェイクニュースでも「X(旧Twitter)でRTするだけなら大丈夫でしょ」と思っている方もいるかもしれませんが、拡散しただけの人も罪に問われることがあります。
実際に、東名高速事件やガラケー女の事件では、RTした人も民事訴訟によって損害賠償請求をされています。
拡散しただけといっても、間違った情報を広げたことに加担しており、煽ってデマにのってしまうことも、誹謗中傷や名誉毀損であることに変わりはありません。
それでは、このようなデマやフェイクニュースに騙されないように、間違って拡散しないようにするためにはどうすればいいのでしょうか。
見分けるための3つのポイントをご紹介します。
まずはしっかりとその投稿を確認しましょう。
ライオン脱走の件も写真をきちんと見れば日本ではないことがわかったように、投稿をちゃんと見れば嘘か真実か見分けられる可能性があります。
また、やたらと過激な言葉を使っていたりしないか、「~らしい」というような曖昧な表現を使っていないかチェックしましょう。
このような表現を使っていつ場合は、発信者が勘違いしていたり、他人を不安にさせて故意に騙そうとしている可能性もあります。
根拠が曖昧だと感じた場合は、自分で調べることが一番です。
「~の話によると」という文言であったなら、その公式HPを見て情報を確認するようにしましょう。
また、X(旧Twitter)なら過去のツイートを遡るなど、発信した人の素性を調べることも真偽を見分けるのに役に立つことがあります。
過去のツイートの傾向から、ふざけて嘘をいう人だということがわかるかもしれません。
デマだと気づいたら、RTなど拡散することは控えましょう。
拡散すると、自分はデマだと気づいていても、他の人が真実だと勘違いしてしまうかもしれません。
また、どうせデマだと気づいているだろうと思って真実かのように煽るようなこともやめましょう。
先述したように、最悪の場合名誉毀損などで訴訟になる可能性があります。
デマがどうかわからないときや自分の発言に自信がもてない場合は、関わらないことが一番です。
以上がデマやフェイクニュースの法的責任と対策についてです。
近年ではデマやフェイクニュースを発信した人は勿論、拡散した人にも法的責任が課せられる場合がでてきています。
無意識でした行為でも、気づいたら犯罪者と同じことをしていた、ということも起こり得ます。
間違った情報を流さないように、騙されないようにしつつ、モラルやマナーを守ってネットを利用するようにしましょう。