Twitterに投稿された逮捕歴は削除不可?逆転敗訴の高裁判決

twitter taihoreki

2020年6月29日、Twitterの逮捕歴に関する投稿の削除を巡って争われていた高裁判決が出ました。
一審(地方裁判所)では削除が認められていたのですが、東京高等裁判所の判決は「削除請求を認めない」と大きく変わりました。

一審と高裁の判決はなぜ逆転したのでしょうか?
今回はこの裁判例について、概要とポイントを説明していきます。

Twitterに投稿される逮捕歴

現在、Twitterで「#逮捕歴」と検索すると多くの犯罪に関する投稿を見ることができます。
ネット上に情報が残り続けてしまうことを「デジタルタトゥー」と呼んで問題視されているように、以前罪を犯して今は更生している人も、Twitter上の何年も前の投稿に苦しめられています。

今回の逆転敗訴裁判の概要

今回話題となった裁判も、Twitterに自分が逮捕されたときの投稿がいまだに出て来てしまうことから、削除を求めたものでした。
ここからは、この裁判の概要と判決の解説をしていきます。

事案の概要

原告となった男性は、2012年にのぞき目的で女湯の脱衣所へ侵入した疑いで逮捕され、罰金10万円の略式命令を受けました。

しかし、罰金を支払った後も記事の投稿がTwitter上に残され、就職活動が妨げられるなどの支障が生じているとして、Twitter社に削除を求めました。

一審判決(東京地裁令和元年10月11日判決)

一審の東京地方裁判所では、男性の削除請求を認める判決をだしました。
理由としてポイントになるのは、以下の2点があげられます。

  • 原告の更生を妨げられないといった利益が、公益より優越すること
  • ツイッターはインターネット上に必要不可欠な情報流通の基盤となっているとはいえないこと

犯罪行為をすることは、勿論良いことではありません。
しかし、前科のある人が心を入れ替えてやり直そうとしているときに、ネット上にある逮捕記事のせいで仕事につけず、生きていけなくなってしまうのも酷な話です。

そこで、前科のある者でも、前科等の情報によって新しい生活が脅かされたり、更生が妨げられないようにする利益を有すると考えられています(例外的に、公的な地位にいる人や、選挙の候補者などであったり、社会に大きな影響を及ぼす事件であったときなどは、こうした前科等を公表されない利益よりも公益が優先されます。)。

つまり、ネット上にある前科等プライバシーにかかる情報は、それを削除してもらう一定の利益があるということです。

また、Googleは検索エンジンとして世界中の多くの人が使っていますが、Twitterは誰もが使っているとは言えません。
例えば、一家の中でも子供は使っているかもしれませんが、両親から祖父母まで、全員が使っている家庭は少ないのではないでしょうか。

このように、Twitterはインターネット上のウェブサイトのひとつであり、Googleのようにネットを利用する上で必要不可欠な情報流通基盤となっているとまでは言えない、と判断されたのです。

今回の事案では、男性が罰金を全額払っており、事件自体も7年以上前の話で、社会に大きく影響を及ぼしたとは言えませんし、現時点でこの事件のニュースにそれほどの公共性・公益性もありません。
そして、実際に就職活動や交友関係に支障が出ていたという事実もあります。
以上から、プライバシーを公表されない利益がTwitterで事件の投稿をされる公益に優越すると判断され、削除が認められたのです。

逆転敗訴の高裁判決(東京高裁令和2年6月29日判決)

しかし、高裁判決では削除の請求を認めませんでした。
その理由として、以下の2点があげられます。

  • Twitterは情報流通の基盤であること
  • 被害可能性が高くないこと

Twitterはアクセス数が世界で6番目に多く、トランプ大統領といった著名人も情報発信しています。
よって高裁は、TwitterもGoogle同様、情報流通の基盤として大きな役割を果たしていると考え、そこで犯罪のニュースなど公益性の高い情報を流すことは大きな利益となると判断しました。

また、Twitterの検索機能の利用頻度はGoogleほど高くないことから、逮捕の投稿が拡散される範囲も限られるため原告が被害を被る可能性も低く、削除による原告の利益より公益の方が優越すると判断し、削除請求を認めなかったのです。

判決の問題点と相違点は?

一審と高裁での判断の分かれ目になったのは、Googleと比べたときのTwitterの評価でした。

一審では、Googleのような情報流通基盤とは言えず、Twitterはウェブサイトの1つに過ぎないと考えた一方、高裁はGoogleと同等程度の価値があり、情報流通基盤であると考えました。
また、高裁において、Twitterの投稿はGoogleより原告に被害を与える可能性が小さいと評価しました。

しかし、TwitterなどのSNSはデマが流されることもあると同時に、Google検索でもTwitterの情報が出てくることもあり、被害可能性が小さいとは必ずしも言えないかもしれません。

罪を償ったあとに前科によって理不尽な生活を強いられない利益を認めている以上、更生する人のためにどのような対応をとるべきなのか、考えていくことが大切です。

なお、高裁判決については上告が検討されているようです。

まとめ

以上が、先日逆転敗訴となった裁判の解説でした。

今回、高裁では削除が認められないという結論が出されましたが、様々な問題点もあり、更なる議論が必要です。
原告の方が上訴するかはわかりませんが、今後の裁判でどのような判断がされるのか注目です。

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