IPアドレスでどこまでわかる?住所や個人を特定可能なの?
ネット誹謗中傷の書き込み犯人を特定するにあたり、掲示板管理者に、発信者情報開示すると、通常「IPアドレス」が公開され…[続きを読む]
「したらば掲示板」は、検索等使い勝手も良く利用者数の多いサイトです。
ただ、したらば掲示板で「誹謗中傷された場合」や利用規約違反・禁止事項違反の場合には、その記事を削除してもらう必要がありますし、投稿者に対して損害賠償請求などをしたければ、情報の発信者を特定する必要もあります。
今回は、下記3点について紹介して参ります。
「したらば掲示板」とは、インターネット上の掲示板の1つです。
インターネット掲示板と言えば古くから2ちゃんねるなどが有名ですが、それ以外にも今はとてもたくさんのものがあります。
中でもしたらば掲示板は、利用者数22万人、月間PVは5億にものぼる巨大掲示板です(参考:2ちゃんねる 2013年資料によると月間27億PV)
したらば掲示板は、2023年4月現在、「株式会社したらば」という会社が運営しており、誰でも簡単にスレッドフロート型の掲示板を作成することができます。
したらば掲示板は、もともと「LINE株式会社」が運営していた無料レンタル掲示板サービスである「livedoor したらば掲示板」でした。
しかし、平成25年5月15日に「シーサー株式会社」が事業譲渡によって引継ぎ運営をしていました。
その後、2018年12月3日にエーゲート株式会社に譲渡されました。
2020年10月12日に、運営元のエーゲート株式会社が株式会社フェイズに改称されました。
2021年2月10日に、株式会社したらばが設立され運営元になりました。
※したらば掲示板 開発日誌「したらば掲示板の運営会社変更についてのお知らせ」
したらば掲示板上で、自分の誹謗中傷レスが載せられたら、どのような対策方法を実施すべきかが問題になります。ネット掲示板上の記事削除方法には、いくつかの方法があります。
まず、「任意」での削除依頼を行います。
サイト管理人に問題のある記事やコメントを指摘して調査してもらい、必要があると判断されれば任意で削除に応じてもららうという単純な方法です。
したらば掲示板の場合、個々の掲示板はそれぞれの掲示板の借主が管理しています。
そこで、記事削除を求める場合、個々の掲示板の管理者にそれぞれ削除請求することになります。その掲示板の借主(管理者)が対応してくれる場合には、これがもっとも簡便でスムーズです。
掲示板の借主自身が対応してくれない場合が問題です。
その場合、運営会社にも削除請求をする必要があります。
運営会社に対して記事削除請求をする場合、「お問い合わせフォーム」などによって理由を記載記入し削除依頼を出すことになりますが、これを見てその掲示板の管理者(借主)に「意見照会」をします。
同意が得られなければ拒否されることがありますが、管理者が削除に同意した場合には、運営会社によって記事削除が行われます。
(参考URL:https://rentalbbs.shitaraba.com/rule/guideline.html)
第5条(禁止事項)
利用者ならびに第三者に対して、以下の行為を行うことを禁止します。
損害を与える行為
名誉を毀損する行為
侮辱する行為
権利を侵害する行為
プライバシーを侵害する行為
いやがらせとなる行為
誹謗中傷する行為
罵詈雑言をあびせる行為
嫌悪感を与える行為
差別的な行為
倫理的に問題のある行為
品性を欠く行為
特定の利用者にしか理解のできないことを行う行為
他のアカウント登録者を含む利用者および第三者の混乱または誤解を招く行為
嘘偽りのある行為
わいせつ的な表現を行う行為
暴力的・残虐的な表現等を行う行為
公職選挙法に違反する行為
宗教に関する勧誘活動とこれらに類似する行為
運営者のサービス運営に支障をきたす行為
運営者のサービスを妨げる行為
法令に違反する行為
アカウントおよびパスワードを不正目的で取得または使用する行為
他のアカウント登録者を含む利用者および第三者に対して迷惑となる行為
ウイルスなどの有害なプログラムを投稿、掲載、開示、提供、送付、配布もしくは販売する行為
他のアカウント登録者を含む利用者の個人情報を収集する行為
出会いを求める行為
本名、住所、メールアドレス、電話番号の記載(一般に公開されている情報・公人に関してはこの限りではありません)
マルチスパム投稿といった同一内容の多数投稿や無意味な文字の羅列等の行為
システムのバグ、セキュリティホールを利用する行為
システムおよびプロトコルの改ざん、解析、集計、二次利用、リバースエンジニアリング、逆アセンブルする行為
他のアカウント登録者を含む利用者および第三者を挑発する行為
その他運営者が不適切と判断する行為
1から33に該当する恐れもしくはつながる可能性のある全ての行為
アカウント登録者を含む利用者が違反行為を行い、運営者およびアカウント登録者を含む利用者ならびに第三者に対して損害を与えた場合、当該違反者は損害を与えた者に対してその責任の全てを負い、損害の全てを賠償するものとします。運営者は、違反行為とそれに関連する事由に起因する直接的または間接的な損害に関して一切責任を負わないものとします。
管理者が削除に同意せず、運営会社に依頼しても任意で記事削除が行われない場合には、いよいよ裁判所に対して記事削除の仮処分を申し立てる必要があります。
この場合、自分がその記事によって権利侵害されていることや記事削除の緊急の必要性などを説明しなければなりませんが、裁判所が記事削除の必要性を認めてくれたら、運営会社に対して記事削除命令が出されます。
運営会社は5ちゃんねる等とは異なり、日本の会社です。つまり、日本の裁判所の命令に従うので、仮処分命令が出たら、速やかに記事は削除されます。
なお、裁判を起こす場合は、弁護士に相談した方がスムーズです。
したらば掲示板で誹謗中傷などが行われた場合、記事を削除することができても犯人を特定しなければ、名誉毀損などの責任追及ができません。
インターネット上で投稿が行われた場合に、その投稿者の情報を開示させる手続きのことを、発信者情報開示請求の手続きと言います。
日本では、プロバイダ責任制限法という法律によって、違法なインターネット記事コメントなどの投稿による権利侵害を受けた人は、その違法な投稿をした人についての情報開示をすることが認められています。
したらば掲示板の場合でも、被害者は「掲示板の管理者」に対して、発信者情報の開示を求めIPアドレスを開示してもらいます。
ところが、犯人を特定したい場合、ここまでの手続きでは具体的に「誰が投稿したのか」を明らかにすることができません。
ここまでで明らかにされるのは、発信者のIPアドレスだけだからです。犯人の個人特定をするためには、ここからさらに、犯人が使用している「プロバイダ」に対して発信者情報開示請求をする必要があります。
インターネットプロバイダに対しては、任意での情報開示を求めることができますが、任意の開示に応じてもらえないことが多く、その場合には、先述したのと同様に、裁判所で発信者情報開示請求の訴訟を起こして開示命令の判決を出してもらう必要があります。
この場合の裁判は、記事削除の場合や運営会社に対する発信者情報開示請求の際の仮処分とは異なり「本訴訟」になります。
よって、訴訟になった場合、発信者情報開示請求にはそれなりの期間がかかってしまうので、注意が必要です。
その後、訴訟手続きにおいて、被害者側が、違法な投稿によって被害を受けていることなどを証明することができて、開示の必要性があると認められたら、インターネットプロバイダに対して発信者情報開示命令の判決が言い渡されます。
これによって、犯人の氏名や住所、メールアドレスなどが開示されるので、その情報にもとづいて、投稿者に対して名誉毀損やプライバシー権侵害などにもとづく損害賠償請求(慰謝料請求)などができるようになります。
以上のように、記事削除請求や発信者情報開示請求を行う場合、任意で対応するかどうかなども含めて、サイト管理者(管理会社)の対応が重要になります。
比較的良心的に柔軟に記事削除や発信者情報開示に応じてくれる会社もあれば、そうでない会社もあるからです。
したらば掲示板の運営会社であったシーサー株式会社の時は、対応は比較的良心的でしたが、現在も同じ運用がされていると推測できます。
記事削除請求にしても発信者情報開示請求にしても、メールなどで問合せをすると速やかに個々の掲示板管理者に連絡をして、意見照会してくれますし、同意が得られたら速やかに削除してくれます。
よって、したらば掲示板の場合、記事削除をする場合の難易度はさほど高いわけではありません。
記事削除請求や発信者情報開示請求のために裁判所に仮処分を申し立てた場合の対応も、やはり標準的です。
型通りに答弁書が提出されて、裁判所で行われる審尋期日(裁判官と面談をして質問などをされる期日)には運営会社の代理人弁護士が出頭してきますが、激しく反論を繰り広げるというわけではなく、通常の対応です。
よって、仮処分を申し立てたら、多くの場合には1回の期日で仮処分が決定されます。
その決定書が運営会社に送達されたら、運営会社はこれを無視することもなく、速やかに記事の削除や発信者情報の開示をしてくれます。
また、したらば掲示板の発信者情報開示手続きをする際、過去には「決定前の調査嘱託」によって発信者情報(タイムスタンプ、IPアドレス、リモートホスト)が開示されたことがあります。
このとき開示の対象とされた書き込みは、「投稿後約1年」が経過しており、一見して明らかに権利侵害をしていることがわかるような内容でした。
このように、運営会社は、権利侵害が明らかな場合などには、比較的柔軟に被害者救済のために対応してくれる姿勢があり、また記事内容も長期保存されるので、被害者としては各種の請求がしやすいです。
したらば掲示板で誹謗中傷を受けた場合、泣き寝入りする必要はないので、早めに記事削除や発信者情報開示請求の手続きをとりましょう。
したらば掲示板に対して記事削除請求や発信者情報開示請求をする場合、いくつか注意点があるので、以下でご説明します。
まず、したらば掲示版で運営会社に記事削除を依頼した場合、削除範囲が広範囲に及ぶケースがあります。
具体的には、裁判所から発信者情報開示命令が出たり、また特定のレスの削除命令が出た場合であっても、スレッド全体や掲示板自体が削除されてしまうことがあります。
発信者情報の請求者側にとっては、具体的にどのようなケースで、どのくらいの範囲の削除が行われるのかの予測がつきにくいという印象を受けます。
なお、したらば掲示板は、平成24年に起こった「パソコン遠隔操作誤認逮捕事件」に利用されたことがあるので、心配があるという人もいるかも知れません。
この事件では、犯人はしたらば掲示板を経由して遠隔操作をして被害者のパソコンを操ったのですが、これは、当時はしたらば掲示板ではTorを使って書き込みをすることができたので、犯人は発信元を偽装して命令を送ることが可能だったためです。
しかし、現在のしたらば掲示板では、海外サーバ経由の書き込みは規制を受けるので、このような掲示板悪用のリスクは減っており、さほど心配する必要はありません。
最後に、したらば掲示板に記事削除や発信者情報開示請求をする場合の費用の相場を確認しておきましょう。
したらば掲示板などのインターネット掲示板の誹謗中傷記事などについて、記事削除や発信者情報開示請求を行う場合、手続きを被害者が自分一人で行うことには限界があります。
任意で削除や開示に応じてくれる場合にはまだ被害者が個人的に対応可能ですが、仮処分や訴訟が必要になってしまったら、複雑な裁判手続きに被害者が個人で対応するのは極めて難しくなります。
そこで、したらば掲示板の場合に運営会社に対して記事削除請求や発信者情報開示請求をする場合、「弁護士」に手続を依頼することが必要になります。
任意の削除依頼の場合には、着手金が5万円程度で済むことが多いですが、運営会社に対して仮処分が必要になった場合には、20万円程度の費用がかかることが標準的です。
また、発信者情報開示請求をする場合には、本訴訟まで必要になることが多いので、費用は30万円~40万円くらいかかることが多いです。
開示請求の手続きにかかる期間ですが、記事削除依頼の場合、任意削除なら1週間程度でも可能ですが、仮処分が必要になった場合には「2週間~4週間程度」かかります。
また発信者情報開示請求をする場合、本訴訟になると手続きが長くかかります。相手のプロバイダの対応にもよりますが、だいたい「4ヶ月~8ヶ月くらい」は見ておくと良いでしょう。
このように、記事削除や発信者情報開示の手続きをすると、どうしてもそれなりに期間がかかってしまいます。時間が経てば経つほど被害は大きくなるので、したらば掲示板で人権侵害を受けた場合には、早めに弁護士に相談して対応してもらうことが大切です。
今回は、したらば掲示板の概要と、したらば掲示板で誹謗中傷を受けた場合の記事削除方法、発信者情報開示請求の方法、さらにはその場合運営会社の対応について解説しました。
運営会社は、比較的柔軟に炎上した誹謗中傷記事の削除に応じてくれるので、良心的な部類の管理者と言えます。調査嘱託があっただけで記事削除をしてくれたケースなどもあります。
ただし、運営会社に記事削除を依頼すると、特定のレスの削除依頼であっても、掲示板のスレッドが丸ごと削除されるなどのこともあるので、注意が必要です。
記事削除請求や発信者情報開示請求をする場合、被害者が自分で手続をすすめることは難しいので、弁護士の助けが必要です。
誹謗中傷記事が投稿された場合、放置しておくとどんどん被害が拡散するので、なるべく早めに弁護士に依頼して記事削除などの対応をしてもらうことが大切です。
今回の記事を参考にして、したらば掲示板で人権侵害に遭った場合、泣き寝入りをせずに早めに気軽に法律の専門家である弁護士に依頼して問題を解決しましょう。