vtuberへの誹謗中傷問題|名誉毀損は成立するか?

架空のキャラクターになりきり、動画配信やライブ配信を行うVtuber(ブイチューバー)が大人気です。

残念なことに、人気が浸透するに連れ、これに対する誹謗中傷事件も増加し、裁判も起きています。

ところが、Vtuberへの誹謗中傷行為に名誉毀損が成立するか否かをめぐっては、Vtuber特有の困難な問題があります。

基礎知識

Vtuberとは

「Vtuber」とは、バーチャル・ユーチューバー(Virtual YouTuber)です。

2D、3Dの架空キャラクターを利用して、動画配信などのネット活動を行っている者をさします。

名誉毀損とは

名誉毀損とは、人の「社会的評価を低下させる危険」のある「具体的な事実」を「公然と示す」行為です。

「公然」とは、不特定または多数人に知らしめることですので、通常、ネット上の投稿行為は公然性を充たします。

また、社会的評価を低下させる危険があれば足り、実際に低下したか否かは問いません。

名誉毀損は、

  • 民事上は不法行為(民法709条)であり、
  • 被害者は加害者に対し、慰謝料などの損害賠償が請求でき(同710条)、
  • 謝罪広告等の名誉回復措置が請求できます(同723条)

また被害者は、加害者の発信者情報を開示するようプロバイダーに請求することができます*。

※プロバイダー責任制限法4条。正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」

さらに、刑事上は名誉毀損罪として、加害者は、3年以下の懲役刑・禁錮刑または50万円以下の罰金刑という処罰を受けます(刑法230条1項)。

名誉毀損の被害者は特定が必要

名誉毀損は、人の社会的評価を低下させる危険ある行為ですから、「誰の」社会的評価が低下する危険があったのかが明らかでなくてはなりません。

例えば、「九州人は皆不倫をしている」とか、「千葉県人は全員放火魔」などの表現では、具体的に特定人の評価を低下させる危険があるとは言えないので、名誉毀損とはならないと理解されています。

【裁判例】

刑事責任の判例です。

名誉毀損罪の被害者は特定した人であることを要し、単に「東京人」「九州人」という漠然とした表示では名誉毀損罪は成立しないとしました(大審院大正15年3月24日判決・大審院刑事裁判例集5巻117頁)。

被害者が特定できれば本名を名指しする必要はない

逆に言えば、その表現が、特定された誰かの社会的評価を低下させるものとわかるのであれば、必ずしも、被害者の本名を名指しする必要はないわけで、これは判例も認めるところです(※)。

※刑事責任に関する最高裁昭和28年12月15日判決:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54692

例えば、本名は鈴木△郎さんで、芸名を「海山亭かわ助」とする落語家がおり、本名を公表せずに芸能界で活動していたとしましょう。

この場合、「海山亭かわ助は、師匠の奥さんと不倫をしている」という投稿は、たとえ「海山亭かわ助」が本名鈴木△郎さんという人間であることが社会の人々にわからなくても、「海山亭かわ助」という、具体的な、ある落語家の評価を下げる表現だと被害者を特定できます。したがって、この場合は名誉毀損行為と評価できます。

キャラクターを演じるVtuberへの名誉毀損も成立する

この落語家の例は、Vtuberの場合も同じです。

例えば、本名鈴木△郎さんが、「○○大王様」という CG キャラクターを創作し、YouTube上に動画をアップして活動をしているとしましょう。

「『○○大王様』の中の人は不倫をしている」という表現は、たとえ本名が鈴木△郎さんであることを世間の人が知らなくても、「○○大王様」を演じている具体的な特定人に向け、その評価を低下させる行為と理解できるので、名誉毀損と評価されます。

Vtuberがチーム活動であるときの問題点

もっとも上の例は、Vtuberの架空キャラクターと本名鈴木△郎さんという人物が1対1の対応関係にある場合です。

ところが、Vtuberの場合、架空キャラクターの活動に、複数の人間が関わっているケースが珍しくありません。

例えば、イラストレーターAさんがCGのキャラクターを創作し、声優Bさんが声を担当し、脚本家Cさんが脚本を書き、クリエーターDさんが動画を作成してアップしたというケースです。これらの活動を統括したり、制作資金を調達するプロデューサーEさんも関わっているでしょう。つまり、このような場合、「○○大王様」というVtuberは、いわば「チーム活動」なのです。

このような「チーム活動」としてのVtuberにおいては、名誉毀損表現の被害者を特定できるかどうかが問題となります。

もちろん「『○○大王様』の声優は不倫をしている」という表現であれば、声優Bさんに対する名誉毀損であることは明らかです。

しかし、そうではなく、たんに「『○○大王様』は不倫をしている」あるいは「『○○大王様』の中の人は不倫をしている」という表現の場合は、被害者を特定できません。

実際に、この点が問題になった裁判例があります(※)。

※東京地裁令和3年4月26日判決(同地裁令和2年(ワ)第33497号事件)・D1-Law.com判例体系ID29064372

名誉毀損ではなく、Vtuberの名誉感情を害する投稿が行われたとして、発信者情報開示請求が行われたケースですが、考え方は同じです。

事案は、加害者がVtuber「F」に対して、「片親だから」、「オヤナシだから」、「母親がいないから」という投稿をしたことが、原告Gさんの名誉感情を侵害する権利侵害行為であるとして、原告がプロバイダーである被告ビッグローブ株式会社に対し、加害者の発信者情報を開示するよう請求したものです。

被告は、架空キャラクター「F」に対する投稿であり、原告Gさんの名誉を毀損するものではないと反論しました。

しかし、裁判所は、次の諸事実を指摘しました。

  • ①原告Gさんの所属する芸能プロであるホロライブプロダクションは多数のVtuberがタレントとして所属するが、架空キャラクター「F」として活動しているのは原告Gさんだけ
  • ②プロダクションは事前にタレントと協議して、その個性を生かすキャラクターを製作している
  • ③「F」の声は、原告Gさんの肉声
  • ④「F」の動きは、モーションキャプチャーで原告Gさんの動きを反映したもの
  • ⑤動画やSNS上の「F」の発信は、原告Gさんの現実生活での出来事などを内容としている
  • ⑥以上の各事実から、Vtuber「F」としての活動は、原告Gさんの人格を反映した活動と認められる
  • ⑦原告Gさんが父子家庭であることは事実である一方、キャラクター「F」には、そのような設定はなされていない

裁判所は、これら指摘した事実から、「片親だから」などの表現は、キャラクター「F」に向けられたものではなく、原告Gさんに向けられ、その名誉感情を害する権利侵害行為と認定し、発信者情報の開示を命じました。

この理は名誉毀損でも同じです。複数の人間がチームとして関与するVtuber活動でも、問題の表現が誰に向けられたものか裁判所が認定できるケースでは、名誉毀損の成立には問題がないことになります。

Vtuberチームの被害者が特定できない場合

他方、この裁判例のような事情がなく、チームによるVtuber活動で、たんにその架空キャラクターを誹謗中傷しているだけで、チームのどの人物に向けられた表現か特定できない場合には、名誉毀損は成立しないことになります。

しかし、それではチームVtuber活動の架空キャラクターは誹謗中傷し放題となる危険があります。

では、どのような解決方法があり得るでしょうか?考えられる方策として、2つの方向があります。

架空キャラクターそれ自体を被害者とする名誉毀損は?

ひとつは、端的にVtuberの「中の人」ではなく、架空キャラクター、例えば「○○大王様」自体の名誉を毀損したとして名誉毀損の成立を認めよという意見です。

たしかに、民事も刑事も、自然人だけでなく、法人を被害者とする名誉毀損、さらには法人格を持たない団体に対する名誉毀損も認めるのが判例・通説です。

その理由は、法人や団体も社会的活動の主体であり、法人や団体に対する社会的評価を保護する必要があるからと説明されています。

この論理からゆくと、Vtuberの架空キャラクターも社会活動の主体であり、その評価を保護する必要があるという理由で、「中の人」「中のチームの人々」とは別個独立に名誉毀損の対象となることを肯定する余地があるはずです。

ただ現時点において、これを認めた裁判例は存在しません。今後、さらにVtuber活動が活発化、一般化してゆけば、架空キャラクターそれ自体に対する名誉毀損を認める裁判例が現れるかも知れません。

ただ、その場合でも、さらに民事上の損害賠償請求をでき、民事訴訟の原告となれるのは誰なのか?親告罪である名誉毀損罪の告訴権者は誰なのか?など、様々な問題を解決しなくてはならないでしょう。

チーム全員を被害者とする名誉毀損は?

もうひとつの方策は、「中のチームの人々」全員に対する名誉毀損と認めよという意見です。

もちろん、例えば「○○大王様の製作チームは全員が不倫している」という表現であれば、明らかにチーム全員の名誉を毀損すると言える可能性はあります。

しかし、たんに「○○大王様は不倫している」との表現がチーム「全員」の社会的評価を低下させると考えるのは、やはり飛躍し過ぎではないでしょうか。

Vtuberチームへの誹謗中傷を抑止するには

もっとも、チーム活動によるVtuberへの誹謗中傷が行われ、チーム内の誰が被害者か特定できない場合であっても、加害者の責任を追及する手段が全くないわけではありません。

多くの場合、Vtuber活動は収益を得るための経済活動として行われていますから、誹謗中傷内容が事実と異なる場合は、虚偽の風説の流布による業務妨害罪(刑法233条)として3年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑に処せられます。それは同時に民事上も不法行為となるので、損害賠償請求を行使でき、発信者情報の開示請求も可能です。

また、先に述べたように、たんに「○○大王様は不倫している」との表現ではチーム全員の名誉毀損とは評価できませんが、そのような誹謗中傷投稿が、度を超して多数回にわたり反復継続されるときには、偽計による業務妨害罪に問える可能性もあります(※)。

※飲食店に数百回の無言電話をかけて嫌がらせをした行為に偽計業務妨害罪を認めた裁判例として東京高裁昭和48年8月7日判決(高等裁判所刑事判例集26巻3号322頁)

さらに、無断でキャラクターの画像を使用し、これに誹謗中傷の言葉を浴びせたり、キャラクターに下品な発言をさせたりする行為は、著作権侵害(著作権法27条)により、10年以下の懲役刑もしくは1000万円以下の罰金刑に処せられます。この懲役刑と罰金刑の両方を科されることもあります(著作権法119条1項)。また民事上も不法行為として損害賠償請求が可能です。

まとめ

Vtuberは新しい存在であるため、これに対する誹謗中傷への法的な対処方法もまだ固まっておらず、実務は試行錯誤の段階と言えます。

実は、そのような未知の事案に対し、既存の法律を駆使して、新しい対抗策・解決策を生み出し、裁判実務に定着させることは弁護士の重要な仕事です。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事はネット誹謗中傷弁護士相談Cafeを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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