【2022年版】侮辱罪が厳罰化|刑法改正により何が変わる? デメリットは?

ネットやSNSでの誹謗中傷・侮辱罪の厳罰化・法律の改正により違反した場合、懲役刑・罰金刑となる可能性も出ており、インターネット上での誹謗中傷への強い牽制効果が期待される一方で、正当な表現に対する萎縮効果が懸念されており反対意見も多いです。

すでに、ネット上で誰かに対してクズ・お前は馬鹿・死ね・気持ち悪いとついつい過去に書き込んでしまって、そのことに対して気になっている方も多いようで、かなり注目を集めているニュースと言えます。

しかし、侮辱罪厳罰化、また2022年秋のプロバイダ責任制限法の改正などにより。具体的にどのような効果が生じるのかは、現段階では未知数です。

今回は、刑法改正による侮辱罪の厳罰化、誹謗中傷の法律の厳罰化について、施行日、なぜ行われたのか改正の理由・主な内容・変更点・厳罰化による弊害(デメリット)・賛成反対意見、遡及、過去の書き込みはいつからどうなるか、表現の自由との関連性はなどをわかりやすく解説します。

なお、侮辱罪の基本や具体例については、下記のページを併せてご参照ください。

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SNS誹謗中傷!侮辱罪が改正・厳罰化される理由

侮辱罪の厳罰化の施行はいつから

2022年6月13日に、国会で改正刑法が可決・成立し、侮辱罪の法定刑が引き上げられました。

2022年7月7日より施行されました

また、侮辱罪の件とは異なりますが、プロバイダ責任制限法の改正が、2022年の秋(10月1日)に施行された点も注目です。

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なぜ侮辱罪の厳罰化?理由・SNSでの賛成意見

なぜ、侮辱罪の厳罰化がなされたか、また法律改正が進んでいるかというと、背景に主にインターネット上での誹謗中傷を抑止したいという賛成側の意図が存在します。

SNSや匿名掲示板などが発展したことで、誰でも気軽にインターネット上で意見を投稿できる環境が整いましたが、その一方で有名人を中心的なターゲットとした誹謗中傷を爆発的に増加させるデメリットをもたらしました。

最近では、有名人の相次ぐ自殺が発生し、その多くがインターネット上の誹謗中傷に起因すると思われるなど、誹謗中傷対策の緊急性が高まっている状況です。

こうした社会的背景を踏まえて、これまで軽く抑えられていた侮辱罪の法定刑を引き上げ、軽率な誹謗中傷に厳罰をもって対処できるようにして、インターネット上での誹謗中傷を抑止することを賛成側が目指しているのです。

侮辱罪の厳罰化・法律改正に関する主な内容・変更点

今回の侮辱罪の厳罰化に関する改正に伴い、これまでのデメリットを改善し、主に以下の3点に関する内容・取扱いが変更されます。

法定刑の引き上げ|懲役・禁錮・罰金刑が追加に

改正刑法に基づき、侮辱罪の法定刑は以下のとおり変更されます。

<改正前>
拘留(30日未満)または科料(1万円未満)

<改正後>
1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

懲役・禁錮・罰金の3つの刑が新設されました。これらの刑は、いずれも従来の拘留・科料より重く、大幅な厳罰化が行われています。

公訴時効期間の延長|1年→3年

「公訴時効期間」とは、被疑者を起訴できる期間のことで、犯罪の法定刑に応じて設定されています。

厳罰化による法定刑の引き上げに伴い、侮辱罪の公訴時効期間も延長されました。

「拘留または科料」が法定刑だった旧法の侮辱罪については、公訴時効期間は「1年」です(刑事訴訟法250条2項7号)。

これに対して、「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」が法定刑となる新法の侮辱罪については、公訴時効期間が「3年」となります(同項6号)。

公訴時効期間の延長により、投稿から「時間が経った誹謗中傷」について刑事告訴が行われた場合にも、被疑者の起訴が間に合うようになることが期待されます。

逮捕要件の緩和|通常の要件による逮捕が可能に

「30万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪」を被疑事実とする場合、以下のいずれかに該当しなければ、被疑者を逮捕することはできません(刑事訴訟法199条1項)。

  • ①被疑者が住居不定である場合
  • ②被疑者が正当な理由なく出頭の求めに応じない場合

旧法の侮辱罪の法定刑は「拘留または科料」であるため、被疑者を逮捕するには上記の要件のいずれかを満たす必要があります。

しかし、厳罰化による法定刑の引き上げにより、侮辱罪で被疑者を逮捕するための要件が緩和されます。

新法の侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」のため、上記の規定が適用されず、以下の通常の逮捕要件を満たせば、侮辱罪の被疑事実で被疑者を逮捕できるようになります。

  • ①罪を犯したことを疑うに足る相当な理由(刑事訴訟法199条1項)
  • ②逮捕の必要性(刑事訴訟規則143条の3)

遡及は?厳罰化でSNSでの過去の書き込みの扱いはどうなるのか

厳罰化の前に、SNSやネット上で誰かにクズ・お前は馬鹿・死ね・気持ち悪いなどすでに言及してしまった方もいるかと思います。

そういった過去の書き込みの扱いはどうなるか、遡及されてしまうのかについては、法務省のサイトに書いてある通りです。

  • 改正法は、令和4年7月7日から施行され、その後に行われた行為に適用されることになります*
  • 施行の前に行われた行為は、改正される前の法定刑が適用されます。

*https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00194.html

上記のとおり、過去の書き込みは改正される前の法定刑が適用されることになります。

しかし、あくまで法定刑がそうだという話で、過去の書き込みなら侮辱罪が適用されない、逮捕されないというわけではありません。

気になる方は訴えられる前に相手と示談することをおすすめします。

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LINE&DMは侮辱罪にあたらないか

上記の通り、誹謗中傷が厳罰化される傾向にありますが、あくまで「公然と、人を侮辱した場合」に限ります。

つまり、LINEでの侮辱、各SNSでのDM(ダイレクトメッセージ)での侮辱などは侮辱罪にはあたらないでしょう。

ただし、公然性を要求されない「脅迫行為」「業務妨害行為」、その他わいせつ行為などは刑事事件になる可能性はあります。

侮辱罪の厳罰化によるデメリットの具体例・反対意見は?

侮辱罪の厳罰化は、誹謗中傷に対する抑止効果を期待できる一方で、正当な表現行為に対する萎縮効果を生じさせる可能性が懸念されています。なぜなのでしょう。賛成意見とは逆の反対意見やその具体例を解説します。

①表現の自由への過度な制約が懸念されている

表現の自由の重要性

表現の自由は、日本国憲法21条1項によって国民に保障された重要な権利です。
表現の自由が保障されているのは、言論活動が個人の人格の発展や、より良い政治的意思決定に繋がると考えられているからです。

言論活動では、互いの意見を批判し合って、よりブラッシュアップされたアイデアを生み出す過程も当然に想定されています。批判的な言動は、時に相手に対して不快な感情を与えることもありますが、それは言論活動において必要なプロセスと捉えられているのです。

したがって、ネガティブな内容であったとしても、それが合理的な理由に基づく正当な批判であれば、憲法上の表現の自由によって保障される必要があるため、侮辱罪厳罰化に対しての反対意見も多いです。

具体例として「検閲」に該当しかねない行為が生じる?

しかし、正当な「批判」と不当な「誹謗中傷」の境界線は、常に明確に判断できるわけではありません。

侮辱罪の厳罰化に伴い、表現の自由によって本来保障されるべき正当な批判が、広く侮辱罪による訴追の対象になってしまう可能性が懸念されています。

法律上の侮辱罪の成立要件から考えれば、正当な批判については違法性が阻却されるため、侮辱罪で処罰されることはありません。

しかし、今回の侮辱罪の厳罰化に伴い、公訴時効期間の延長・逮捕要件の緩和と言う形で、捜査機関の権限が拡大された形となりました。

権限拡大に伴い、たとえば捜査機関が行政に都合の悪い言動を「選別」して逮捕・起訴するなど、特定の言動に対する恣意的な摘発が行われるおそれが強まったと見ることもできるでしょう。

このような行為は、日本国憲法22条2項で禁止されている「検閲」にも該当しかねないため、侮辱罪厳罰化に対する反対意見も多いです。

厳罰化された侮辱罪が「検閲」などの手段として用いられることがないように、国民は侮辱罪の運用に関して、捜査機関の運用・動向を注視する必要があります。

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侮辱罪の厳罰化は、施行から3年経過後に検証・見直しの見込み

改正刑法附則3項において、2022年7月7日の施行から3年を経過した際に、以下の2つの観点から検証を行い、その結果に基づく必要な措置を講ずることが定められました。

  • インターネット上の誹謗中傷に適切に対処することができているかどうか
  • 表現の自由その他の自由に対する不当な制約になっていないかどうか
    など

侮辱罪の厳罰化がもたらす効果は未知数であるところ、今後3年間の運用状況を踏まえて、表現の自由と誹謗中傷の抑制のバランスが取れるような検証・見直しを行うことが期待されます。

まとめ

今回は2022年の侮辱罪の厳罰化、誹謗中傷の厳罰化がなぜ行われたか、その内容・刑法改正はいつからか・表現の自由などとの兼ね合い、考えられるデメリット・反対意見、具体例、過去の書き込みについてなどを解説しました。

侮辱罪の厳罰化は、不当な誹謗中傷に対する牽制になり得る一方で、正当な批判的言論を萎縮させてしまうおそれがあります。

特に、厳罰化により捜査機関の権限が拡大されたことに伴い、侮辱罪が「検閲」の道具として用いられてしまわないか、国民は捜査機関の運用・動向を注視しなければなりません。

また、インターネット上での誹謗中傷に関する対策は、法改正を行っただけで終わるものではありません。正当な言論とそうでない誹謗中傷の区別につき、国民一人一人が正しい理解と意識を持ち、健全な言論社会の実現に向けた取り組みを行うことが重要と言えます。

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監修・執筆
阿部由羅(あべ ゆら) 弁護士
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで、各種の法律相談を幅広く取り扱う。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
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