名誉毀損罪とは|構成要件は?どこから罪?時効は?親告罪?わかりやすく解説
ネットで他人を誹謗中傷すると「名誉毀損」となって相手から刑事告訴や損害賠償請求をされる可能性があります。一方誹謗中傷…[続きを読む]
オンラインゲームやX(旧Twitter)、匿名掲示板やブログなどにおいて、ハンドルネーム(インターネット上で活動するときの名前)で誹謗中傷・暴言を言われて悩んでいる方はいらっしゃいませんか?
今回はハンドルネームに対する誹謗中傷であっても、名誉毀損罪や侮辱罪は成立するのかどうか?被害を受けている時の対処法とともにご紹介していきます。
ネットトラブルはスピードが命と言われるほど、ほんと少しの対応の遅れで被害が拡大してしまうこともあります。
ネット上での誹謗中傷や暴言に悩まれている方はぜひ今回の記事を参考にして、できる限り早く対応するようにしてください。
まず結論からお伝えしますと、ハンドルネームでの名誉毀損罪や侮辱罪が成立する可能性は低いと言えます。
ハンドルネームであっても名誉を毀損されネット上での評判が悪くなったり、ひどい侮辱を受けているにも関わらず罪が成立しないのはなぜか、不思議に思われる方も多いのではないでしょうか。
その理由は、名誉毀損や侮辱罪が成立するための要件にあります。
まず、名誉毀損罪(刑法230条)の成立要件は以下の3つです。
次に、侮辱罪(刑法231条)の成立要件は以下の3つです。
各々の要件について詳しく見ていきましょう。
「具体的事実の適示」とは、「単なる個人的な評価ではなく具体的・客観的な事実を示している」ということです。
「具体的事実を適示しない」とは、反対に「具体的・客観的が示されず、評価のみである場合」のことを指します。
名誉毀損と侮辱罪は、この「具体的事実の適示」があったかどうかによって区別されます。
つまり、具体的事実が示されていた場合には名誉毀損罪、単なる評価のみであれば侮辱罪となります。
「公然性」とは、公然の場において、不特定多数の人に対して向けられた発言であることを指します。
インターネット上の掲示板やSNSへの投稿は、不特定多数の人の目に触れ広く世間に広がっていくものですので、「公然性」の要件は満たされることになります。
「社会的評価の低下」とは、誹謗中傷または侮辱のの内容によって、社会的評価を低下させる可能性があることを指します。
この3つの要件のうち、ハンドルネームでは名誉毀損罪や侮辱罪が成立しないと判断される理由は、「社会的評価の低下」です。
ハンドルネームに対する誹謗中傷や侮辱は、誰に対しての誹謗中傷・侮辱なのかが明示されていません。
そのため、仮にネット上でハンドルネームに対する評価が下がったとしても、現実の社会生活においては評価が下がるわけではないという観点から、「社会的評価の低下」という要件を満たさないと判断されます。
ハンドルネームに対しては、どんな暴言やひどい侮辱であっても罪に問われないというわけではありません。
特別な事情が認められた場合には、ハンドルネームなどに対しても名誉毀損罪や侮辱罪が成立する場合もあります。
それは「本人とハンドルネームとの結びつきが社会的に明白である」場合です。
ハンドルネームを見た人が、すぐに本人と認識できるほど社会的に認知されている場合には、ハンドルネームなどに対する誹謗中傷であっても、本人の社会的評価を低下させることになります。
現代の世の中では、ゲームなどの趣味で知り合った者同士のオフ会なども盛んに行われています。
このような場合、インターネット上のハンドルネームが現実の社会生活でも用いられているケースも多くあります。
ハンドルネームを用いてオフ会という「社会的活動」を行っている場合には、ハンドルネームに対する暴言や侮辱であっても、名誉毀損罪や侮辱罪が認められる可能性は十分高いと言えます。
またハンドルネームが本人を表す通称とされている場合も同様です。
作家や漫画家のペンネームや芸能人の芸名に対する誹謗中傷や侮辱を行った場合にも、本人の社会的評価の低下に繋がると判断され、罪に問われます。
実際に裁判において、ハンドルネームに対して名誉毀損罪や侮辱罪が成立した事例を確認していきましょう。
ペンネームは作家を表す通称であり、ペンネームに対する誹謗中傷は直接作家の社会的評価を低下させるものであると判断された。
参考:東京地裁判決平成24年4月26日
原告のハンドルネームは趣味仲間の間で広く認知されていただけではなく、ハンドルネームをインターネット検索することで本人の顔写真などの個人情報も表示された。
そのため、ハンドルネームに対する投稿であっても本人の社会的評価の低下に繋がると判断された。
参考:東京地方裁判所平成29年9月26日判決
具体的な事案によって個別の判断が必要ですが、ハンドルネームでも名誉毀損に値する場合は十分にあり得ます。適切な情報発信が求められます。
誹謗中傷や侮辱のなかにも、様々な度合いのものが存在します。
個人的に相手のアカウントをブロックしたり、アカウントの削除公開範囲の設定などで対応できる場合には、まずはできる限り早めに対応するようにしましょう。
誹謗中傷や侮辱が無視できないような内容で、個人的なブロックなどでは対応できない場合には、投稿されたサイトの運営者に対して削除依頼をする方法もあります。
各々のサイトの利用規約に従って削除を要請することで、時間はかかるかもしれませんが、投稿を削除してもらうことができる可能性があります。
ネット上の書き込みが名誉毀損罪・侮辱罪に該当すると判断できる場合には、できるだけ早く専門家へ相談することが大切です。
ネット上における名誉毀損や侮辱についての相談先は以下の通りです。
各都道府県の警察本部には、サイバー犯罪専門の相談窓口が設けられており、各警察署のホームページから連絡先を確認することができます。
被害の内容によっては、該当する投稿の削除や事件に関して捜査してもらうことができますが、事件性が高くない事件の場合には優先度が低いと判断されてしまい、すぐに対応してもらえないケースもあります。
法務局では人権擁護の業務も行っています。
そのため、インターネット上でトラブルのうち誹謗中傷や侮辱などの人権侵害に関する相談窓口が存在します。
法務省への相談料は無料です。
パソコンからも携帯電話からも気軽に相談することができ、被害の内容によっては、警察への紹介や削除要請をしてもらうこともできます。
参考:法務局-「インターネットを悪用した人権侵害をなくしましょう 」
弁護士に相談することで、自分が今どのような状況にあるのか?そもそも名誉毀損罪や侮辱罪にあたるのか?などの基本的なことから確認してもらえます。
そのうえでどのような対処法をとるのが最善なのか、また投稿の削除依頼はもちろんのこと、名誉毀損被害や侮辱による被害に対する訴訟に関する依頼をすることもできます。
罪が成立するような投稿をする者は、仮にその投稿を削除したとしても、同じような投稿を繰り返すことが多く、犯人の特定・損害賠償請求など法的手段を取ることが有効な手段となる場合もあります。
ネット上における誹謗中傷などの被害に遭っている場合には、ネットトラブルに詳しい弁護士への相談をおすすめします。
たとえネット上でハンドルネームに対するものであっても、名誉毀損罪や侮辱罪が成立した場合、該当する書き込みの投稿者は責任が問われることになります。
名誉毀損行為や侮辱行為は、刑事上の問題と民事上の問題に分けて考えなくてはなりません。
名誉毀損罪と侮辱罪の刑事責任と民事責任について 確認していきましょう。
加害者が起訴され、刑事裁判で有罪となった場合に課される刑罰は以下の通りです。
名誉毀損行為や侮辱行為によって受ける被害は、精神的な苦痛であることが多く、通常投稿者に対して請求できる損害賠償は「慰謝料請求」となります。
一般的に名誉毀損行為の方が侮辱行為よりも違法性が強いと考えられ、慰謝料請求が認められやすいと考えてください。
認められた場合の慰謝料の金額においても、侮辱行為に対する慰謝料よりも名誉毀損行為に対する慰謝料のほうが高くなることが多いです。
名誉毀損行為の場合、誹謗中傷の内容や社会的評価の低下の程度、対象の相手が著名人か一般人かなどを判断材料とした社会に与える影響の大きさなどによって、慰謝料の金額は大きく差が開きます。
いずれの金額もあくまでも目安にすぎず、だいたいの場合10万円~100万円までの間に落ち着くことが多いです。
侮辱行為が行われたことだけを理由として不法行為が認められ、慰謝料請求が可能となるケースは名誉毀損行為に比べて多くありません。
仮に侮辱罪に対する慰謝料請求が認められたとしても、10万円以下となることが多いです。
今回はハンドルネームに対する誹謗中傷や暴言は、名誉毀損罪や侮辱罪が成立するかどうか確認してまいりました。
通常ハンドルネームなどの個人を特定できない名前に対する誹謗中傷は、名誉毀損罪・侮辱罪が成立することはありません。
しかし、ハンドルネームが通称として使われている場合など、罪が成立するケースも少なくありません。
罪が成立した場合、相手に慰謝料を請求できる可能性もあります。
ご自身の受けている被害が名誉毀損罪や侮辱罪に当たるのかどうかわからない…という方は、まずはネットトラブルに詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。